研究課題/領域番号 |
20K21079
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
守谷 誠 静岡大学, 理学部, 講師 (70452208)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | マグネシウム / イオン伝導 / 固体電解質 / 全固体電池 / 分子結晶 / 超分子 |
研究実績の概要 |
本研究では、全固体マグネシウム電池の実現には、これまで注目されてきた無機固体化学から飛躍した新たな探索空間で固体電解質開発に取り組むことが必要と考え、分子結晶を活用した新規マグネシウム伝導体の開発を検討している。具体的には、すでに我々が開発に成功しているリチウムイオン伝導性分子結晶電解質の作製法を参考に、分子性アニオンを有するマグネシウムイオンと種々の有機基質との反応から、イオン伝導パスを格子中に有する分子結晶を合成するとともに、単結晶X線構造解析による結晶構造の解明を試みている。また得られた分子結晶の結晶状態におけるイオン伝導性の評価とマグネシウムイオン輸率の測定を行うことにより、マグネシウムイオン伝導体のとしての特性評価も検討している。 本年度は、我々が過去に作製した、Mg{N(SO2CF3)2}2(以下、Mg(TFSA)2)とシクロペンチルメチルエーテル(以下、CPME)からなる新規分子結晶Mg(TFSA)2(CPME)2に着目し、結晶状態でのイオン伝導度とマグネシウムイオン輸率の評価を実施した。その結果、室温付近において、10^-7 S cm^-1程度ではあるものの、この分子結晶がマグネシウムイオンを選択的に伝導させることを明らかにした。この結果は、分子結晶における室温下でのマグネシウムイオン伝導を確認した初めての例であり、マグネシウム伝導性固体電解質の開発において重要な知見を提供するものといえる。 また、未発表ではあるもののCPME以外の有機基質を構成要素とする含マグネシウム分子結晶の合成と単結晶X線構造解析にも成功した。これらの分子結晶の固体電解質としての特性評価は、今後、進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、固体電解質の新たな探索空間として分子結晶に大きな可能性があることを確認するため室温付近でマグネシウムイオンを拡散させる分子結晶を開発することを第一の目標としている。また、マテリアルズインフォマティクスの応用による、分子結晶のマグネシウム伝導性を大幅に向上させる材料設計指針の構築を指向し、分子結晶電解質の構造とマグネシウムイオン伝導性に関する基礎的知見を蓄積することを目標としている。 その第一歩として、本年度は複数種の新規含マグネシウム分子結晶の作製と、その結晶構造解析に成功するという成果を得た。また、以前に結晶構造解析に成功していた分子結晶についてマグネシウムイオン輸率の測定を試み、この分子結晶が室温付近でマグネシウムイオンを拡散させることを明らかにすることに成功した。以上の結果をまとめると、本研究はおおむね順調に進展していると結論づけられる。
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今後の研究の推進方策 |
分子結晶電解質の特性向上には、結晶構造と伝導性の相関理解が重要である。そのため、今後も種々のマグネシウム塩と有機基質との組み合わせからなる新規含マグネシウム分子結晶の作製と結晶構造解析、電気化学測定を系統的に行い、構造―物性相関の理解の基礎となる知見を収集する。 また本研究課題と並行して、我々が検討しているリチウムイオン伝導性分子結晶電解質の開発から得られた伝導性向上に向けた新たな知見を、本研究で実施しているマグネシウムイオン伝導性分子結晶電解質の開発にも適用することにより、さらにマグネシウムイオン伝導性に優れる分子結晶の開発を目指す。
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