研究課題/領域番号 |
20K21080
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
丹羽 健 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (40509030)
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研究分担者 |
ガイダ ニコアレキサンダー 名古屋大学, 工学研究科, 特任助教 (70837559) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 超高圧合成 / 窒化物セラミックス / ダイアモンドアンビルセル |
研究実績の概要 |
本申請課題である,第4の窒化珪素である『SiN2』のバルク焼結体の合成と,その粒界・界面構造および機械特性の解明になる.2020年度はSiN2単相バルク焼結体合成のための前駆体の評価および合成試料測定装置の改良に取り組んだ.共同研究者であるガイダ博士が大型プレスにて合成したγ型Si3N4の緻密焼結体を作製した.合成した数mmサイズの焼結体の表面に付着した試料カプセルを研磨して除去し,均一で透明な焼結体であることを確認した.本年度はガイダ博士により合成されたSi3N4高圧相の焼結多結晶体を,ダイアモンドアンビルセル中でさらに窒化してSiN2の焼結体を合成することを目的としていた.合成条件は60GPa以上で,この圧力領域における窒化物セラミックスの挙動はよくわかっていない.脱圧過程や焼結保持時間,焼結温度でその機械特性も大きく変わることが予想される.実施年度では前年からのコロナや情勢不安により,実験装置の入手が困難になる中,装置の不具合や改良等で時間がかかってしまったが,目的達成のため代替法も考慮して取り組んだ.また本研究成果の先を見越したデバイス化や,より先端的な研究の基礎となることを目的に,多窒化物の薄膜化にも取り組んできた.SiN2の薄膜が合成されるのがベストであるが,まずは金属系窒化物の中で初めて発見された多窒化物であるPtN2の薄膜合成に取り組んだ.その成果は投稿雑誌に受理されており,バルク体の合成および物性評価のさらにその先の研究の展開に見通しが立った.最終年度は本研究課題の最大の目的であるSiN2バルク多結晶体の物性(特に機械特性)の評価を目指す.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨今の情勢のため,実験装置や消耗品が思うように入手できない状態であるが,できる範囲で取り組み,幸い研究が大幅に停滞することはなかった.2021年度はバルク体研究のその先まで見越した研究成果を得ることができたため,最終年度である2022年度は超硬質性窒化物セミラックスの物質科学構築を目指して取り組む予定である.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度はSiN2バルク体の構造最適化およびその物性測定に注力する.結晶構造自身は明らかになっているが,その詳細(例えば原子変位パラメータなど)は不明であり,単相に近いバルク体が合成できれば明らかにすることができる.またSiN2はSi3N4より高い体積弾性率を有することがわかっているが,その組織との相関は不明である.最新の機械特性評価と電子顕微鏡による組織観察を組み合わせることで,そのメカニズムに迫る予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議参加旅費を確保していたが,コロナ禍のため海外渡航が不可能になり,その分を繰り越した.また,消耗品に関しても半導体不足の影響で納品が間に合わない物品もあり,翌年納入に切り替えた.
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