軟磁性材料は、インダクタやトランスコアなど、様々な機器に利用されているおり、その中では磁化(N極-S極)の動きをどの速度(周波数)で制御するかが重要になる。Society5.0において軟磁性材料に期待される周波数は、数100キロヘルツからメガヘルツ領域になることが予測されるが、この周波数領域で効率的に動作できる磁性材料の開発が必要とされている。本研究では、上記に資する磁性材料として、蛋白質結晶中に磁性ナノ粒子に着目し、その磁気的性質として、特に磁性ナノ粒子間の相互作用を利用した磁性制御について検討した。 2021年度は、2020年度に達成した蛋白質(PfV)結晶内に合成した磁性(Co-Pt)ナノ粒子の磁気的特性の評価に注力した。作製した磁性ナノ粒子は、粒径が約2-3 nmのナノ粒子形状であり、合成濃度を適切に制御することにより、蛋白質結晶内で孤立に分散したナノ粒子を生成することが可能であることが分かった。また、合成した磁性ナノ粒子は、室温で超常磁性と呼ばれる磁化(N極‐S極)の向きが熱エネルギーによって不安定化された状態であることが分かった。この超常磁性の詳細を調べることにより、磁性ナノ粒子間の磁気的相互作用の評価を行った。その結果、磁性ナノ粒子の合成濃度を増加させることで、磁性ナノ粒子間の磁気的相互作用が連続的に増強することが分かった。 冒頭に記した軟磁性材料の動作周波数は、磁性ナノ粒子間の磁気的相互作用を制御することで制御できることが予測されるため、本研究の進展によりターゲットとした周波数領域への展開が期待される。
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