研究課題/領域番号 |
20K21087
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中野 貴由 大阪大学, 工学研究科, 教授 (30243182)
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研究分担者 |
石本 卓也 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (50508835)
小笹 良輔 大阪大学, 工学研究科, 助教 (80845347)
松垣 あいら 大阪大学, 工学研究科, 助教 (10592529)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | 骨基質配向化サイエンス / 骨基質微細構造 / 骨質 / アパタイト / 非コラーゲン性タンパク質 / オステオサイト |
研究実績の概要 |
材料工学を基軸に生物工学を融合する新たな試みにより、生体の生理的特性や遺伝子情報に基づく骨基質配向化形成の機序解明を目指し、新融合分野としての「骨基質配向化サイエンス」という未踏の学術分野を開拓する。非コラーゲン性タンパク質関連遺伝子(詳細は非公開)欠損動物を対象に、材料工学的アプローチを核としつつ、分子生物学・細胞生物学や骨再生学等の異分野連携体制の下で本研究を進めている。本年度は、特定の非コラーゲン性タンパク質関連遺伝子欠損動物を対象に、具体的には以下の(1)~(3)の項目について研究を実施した。 (1)遺伝子欠損動物における骨基質配向性変化を解明:非コラーゲン性基質タンパク質関連遺伝子欠損骨の材料学的解析に基づき、遺伝子欠損により、骨は石灰化の進行に応じた異なる配向化構造を示すことを明らかにした。 (2)骨基質配向化異常をもたらす細胞生理学的機序の解明:遺伝子欠損骨からの骨系細胞抽出により組織・細胞配向化の生体模倣培養モデルを構築した。 (3)基質タンパク質が配向性異常をもたらす機構を遺伝子情報解析に基づき解明:配向性劣化を示す動物骨について、次世代シーケンシングを用いた遺伝子情報解析を実施した。基質タンパク質を起点とした特定の分子経路は、骨内部のオステオサイトと関連して骨機能を調節することが明確となり、骨配向化の新たな生理学的機序が見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要に記述のとおり、今年度に計画していた以下の項目は、当初計画を上回り進展した。特に、今年度は基質タンパク質欠損による骨配向化異常を見出すとともに、遺伝子情報解析を行うことでその配向化破綻機序の一端が明確になったことは極めて意義深い。以下に、代表的な項目ごとの進捗を示す。なお記号の意味は、◎:当初計画以上に進展、〇:計画通り進展、である。 (1)遺伝子欠損動物における骨基質配向性変化を解明:〇、(2)骨基質配向化異常をもたらす細胞生理学的機序の解明:〇、(3)基質タンパク質が配向性異常をもたらす機構を遺伝子情報解析に基づき解明:◎ 以上より、総合的に「当初の計画以上に進展している。」と自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、基質タンパク質が関連する配向化異常の動物モデルを確立したのみならず、遺伝子情報解析を行うことで基質タンパク質を起点とした配向化機序の一端を見出したことから、「骨基質配向化サイエンス」構築のための研究基盤が当初計画を超えて整備されたと言える。令和3年度は、前年度の成果を踏まえ、基質タンパク質下流で働く機能性分子の配向化への関与について解明を目指す。とりわけ、基質タンパク質と直接相互作用し配向化を司ることが期待されるオステオサイト機能に着目し、材料学・生物学の観点から多面的に研究を進める。
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