研究課題
本研究は低温(150℃以下)・短時間で金属3Dプリンタによる積層造形を可能にする「ガリウム系液体金属に銅ナノ粒子を分散させたペースト(以下、LTGCペーストと呼ぶ)の開発」を目的とする。本年度は、金属3Dプリンタによる印刷・造形に必要なペースト特性として、高粘度(目標 100-500 Pas程度、ハンドクリーム程度の粘度)とチクソ性(外部から力をかけている間は流動性を示し外力がなくなり静止した状態では流動性がなくなる性質)を示すLTGCペーストを、液体金属(EGaIn)と銅粒子の混合比率を変えて検討した。Cu :EGaIn=1:3、溶媒として乳酸とエチレングリコール系の混合溶媒(徐々に添加)で上記特性を有するLTGCペーストを作成できることを見出した。LTGCペーストは、Cuとガリウムとの合金形成により、150℃で合金化し、硬化することが確認された。また、LTGCペーストの混合する銅粒子(扁平銅粉、銅微粒子:500nm, 200nm、銅ナノ粒子:3nm)の種類を検討した結果、Cuとガリウムとの合金形成速度が粒子サイズに依存することを見出した。LTGCペーストを混合、塗布、熱硬化させるのに最適な混合する銅粒子は、扁平銅粉が最適であることがわかった。但し、LTGCペーストの合金化反応は、室温でも進行し、その熱硬化反応の再現性が低いこと、更に硬化物が脆く、強度に課題があることが判明した。
3: やや遅れている
「ガリウム系液体金属に銅ナノ粒子を分散させたペースト(LTGCペースト)は調製できたが、その熱硬化反応の再現性が低いこと、硬化物が脆く強度に課題があるなど、目標とする金属3Dプリンタによる印刷・造形に必要なペースト特性が得られていない。
熱硬化反応の再現性が低いのは、LTGCペーストと銅粒子との合金化反応が、室温でも混合直後に進行して、合金化反応が制御できないことに原因があると考えている。そのため、今後は、液体金属と銅粒子を直接混合するのではなく、液体金属をカーボン/酸化皮膜でコートした液体金属ナノ粒子(カーボン/酸化皮膜の殻をもち、内部は液体金属のコアシェル粒子)を調製し、この液体金属コアシェル粒子と銅粒子からなるペーストを作成する。このカーボン/表面酸化皮膜により銅粒子と液体金属との合金化反応は、加熱時にのみ生じるように設計する。この液体金属のコアシェル粒子と銅粒子をベースとするLTGCペーストにより、金属3Dプリンタによる印刷・造形を実施する。
金属3Dプリンターに利用できる液体金属系ペーストの開発が遅れており、3Dプリンターによる塗布・印刷するための機器購入をしなかった。また、新型コロナの影響下で2020年4月~9月とほぼ半年、研究が進められない状況もあった。以上の理由から、当初予定していた予算使用額が少なくなり、次年度使用額が生じた。この発生した次年度使用額については、3Dプリンターにより塗布・印刷するための塗布・印刷機器やインク化するための分散装置購入に使用する。
すべて 2020 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (2件)
Nanomaterials
巻: 10 ページ: 1689~1689
10.3390/nano10091689
https://wps.itc.kansai-u.ac.jp/colloid/publications/publications2020
https://scholar.google.co.jp/citations?user=4hE8PwYAAAAJ&hl=en