本研究は低温(150℃以下)、短時間で金属3Dプリンタによる積層造形を可能にする「ガリウム系液体金属に銅ナノ粒子を分散させたペースト(以下、LTGCペーストと呼ぶ)の開発」を目的とする。本年度は、金属3Dプリンタによる印刷・造形に必要なガリウム系液体金属導電ペーストのための導電粒子として、グラファイトで表面コートされたガリウム系液体金属粒子を合成し、そのペースト化を検討した。ガリウム系液体金属粒子を合成するために、液体金属ナノ粒子の合成Ga75.5%、In24.5%の液体金属(EGaIn)を種々のアルコール溶媒中(メタノール、エタノール、1-プロパノール、1-ヘキサノール、1-オクタノール、1-デカノール)で120mim、氷浴下でホーンタイプの超音波装置で照射してEGaIn液体金属ナノ粒子を合成した. 以後、溶媒Aを用いて合成したEGaIn液体金属ナノ粒子をLMs(溶媒A)と記す。その結果、特に、LMs(エタノール)のみ、極めて良好な分散状態を示すことがわかった。LMs(エタノール)粒子は、2ヶ月経過後も粒子サイズを保持しているのに対し、LMs(プロパノール) 粒子は合一し粗大化していた。このLMs(エタノール)粒子の安定化要因を検討するため、XPS、ラマン分光、SEM-EDS分析を実施した。その結果、LMs(エタノール) 粒子表面は酸化ガリウムとグラフェン様カーボン(sp2炭素)との複合膜で形成されていることが明らかとなった。この表面複合膜がガリウム系液体金属粒子を安定化し、粒子凝集や合一を抑制していると考えられる。このグラファイト表面コートされたLMs(エタノール)粒子とグラファイトとの混合ペーストは、金属3Dプリンタによる印刷・造形に必要なチクソ性(外部から力をかけている間は流動性を示し外力がなくなり静止した状態では流動性がなくなる性質)を示した。
|