ポリN-イソプロピルアクリルアミド(PNIPAM)は下限臨界溶液温度(LCST)を有する温度応答性ポリマーであり、アクチュエーター、センサー、ドラッグデリバリーシステムの材料など、様々な応用が期待されている。PNIPAMは、ポリメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(PHEMA)など他のポリマーと共重合させることによって機械的強度が付与されるとともに、共重合組成などによって応答温度を変更できる。これを利用すると、用途に応じて、応答温度と機械的強度の両方を設計することが可能になると期待される。 本研究では、温度応答性コポリマーを含む溶液に超音波を照射するという簡便な方法を用いて、コポリマーの特性改質を行う方法の開発を行なった。超音波は制御性が高く、スイッチのOn/Offによって反応の開始・停止を容易に制御可能である、超音波照射条件の変更によって反応速度を制御可能である、という特長を有する。本研究では、「超音波照射条件」と「合成コポリマーの特性」との関係を詳細に検討した。温度応答性の指標として、生成コポリマーを含む溶液の透過率の温度依存性から求められる、下限臨界溶液温度LCSTを測定した。 先ず、超音波照射に伴う挙動を検討したところ、照射時間が長いほどコポリマーの応答温度が変化するとともに、応答に必要な温度変化の値は比較的短時間で小さくなる、すなわち温度応答性が鋭くなることを明らかにした。次に、超音波強度が高いと、応答温度を大きく変化させることができることを明らかにした。溶媒組成および温度は、超音波キャビテーションの発生に影響するが、その影響は小さいことを明らかにした。また、いずれの共重合組成においても、超音波照射によって温度応答性の鋭いコポリマーを獲得できるとともに、照射時間によって温度応答性を制御できることを明らかにした。
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