研究課題/領域番号 |
20K21102
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
杉山 弘和 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (70701340)
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研究分担者 |
紀ノ岡 正博 大阪大学, 工学研究科, 教授 (40234314)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | iPS細胞 / 凍結 / 解凍 / 保護剤 / 計算化学 / プロセス設計 / シミュレーション / 環境影響評価 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、iPS細胞凍結の課題に対して、分子・細胞・プロセスの各スケールで取り組み、成果を階層的につなげた「マルチスケール設計基盤」を構築することである。初年度の2020年度は、遂行項目①「新規保護剤の探索」、項目②「多細胞凍結モデル構築」、項目③「冷却装置モデル構築」に取り組んだ。 「新規保護剤の探索」については、文献等をもとに候補物質を挙げ、分子動力学(MD)計算と量子化学計算を用いて膜透過性と溶媒和自由エネルギーをそれぞれ分析し、評価した。一部の成果は、学術誌Cryobiologyに掲載された。これらの物性評価に加えて、社会的観点から、ライフサイクルアセスメント手法を用いた環境影響評価も実施した。 「多細胞凍結モデル構築」については、これまで構築してきた一細胞凍結モデルを用いて、多数の非線形凍結温度プロファイルを品質・生産性の観点から多目的評価した。成果の一部は学術誌Computers and Chemical Engineeringに掲載された。さらに充填および解凍プロセスに展開し、凍結保存プロセス全体をカバーできるようにした。充填および凍結プロセスについては、研究分担者が取得した実験データをもとに、Reactive Oxygen Species(ROS)の蓄積を、温度と時間の関数で表す統計モデルを構築した。成果の一部は、学術誌に投稿した。 「冷却装置モデル構築」については、数値流体力学(CFD)を用いたシミュレーションモデルを構築した。プロセス条件ごとに、装置内の温度分布を計算し、これと一細胞凍結モデルを連成させ、プロセスの品質・生産性評価を行った。成果については、論文投稿の準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遂行項目①「新規保護剤の探索」については、当初予定した分子動力学(MD)計算と量子化学計算による候補化合物の評価を実施することができた。項目②「多細胞凍結モデル構築」については、非線形温度プロファイルの多目的評価を実施し、さらに凍結保存プロセス全体への展開にも進んだ。項目③「冷却装置モデル構築」についても、CFDによるシミュレーションモデル構築と、装置内温度分布計算、さらにはプロセス評価まで実施した。学術誌2報、査読付きプロシーディングス1報、総合解説1報、学会発表6件(国内3件、海外3件)の成果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
2年目の2021年度は、遂行項目①「新規保護剤の探索」、項目②「多細胞凍結モデル構築」、項目③「冷却装置モデル構築」に引き続き取り組む。「新規保護剤の探索」については、細胞凍結モデルとの連成に必要なパラメータについて考察を進める。「多細胞凍結モデル構築」については、多細胞系への展開について検討する。「冷却装置モデル構築」については、プロセス評価に関する論文投稿に取り組む。さらに、社会的観点からの分析についても継続する。
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