反応条件下で合金のへき開面を得るため、反応ガス中でミリングを行った。合金試料には、適度な触媒活性をもつNiを第一元素に用い、組み合わせる元素としてAl、Co、Cu、Ga、Zr、HfおよびTaを用いた。アーク溶解により得た合金を空気中で粉砕し、単一相の金属間化合物粒子を得た。密閉容器内に合金を入れ、水素ガスでパージした後、アセチレン0.5 barと水素3 barの混合ガスを加えて室温にて遊星ボールミルにより600rpmにてミリングを行った。 反応初期すなわち転化率が低い段階では、主生成物はいずれの合金上でもエチレンであり、選択率は50%前後の値を示した。このとき、選択率40%前後でエタンも生成した。エタンの生成経路として、エチレンを経由する逐次的反応経路に加えて、アセチレンから直接生成する経路も存在することが分かった。反応時間が経過するにつれて、エチレン選択率が低下しエタン選択率が増加した。その結果選択率の逆転が起こり、主生成物がエタンになった。この選択率の逆転が観察された時点での転化率を、各触媒の部分水素化に対する選択性の指標とした。すなわちこの転化率が高いほど触媒のエチレン選択性が高いことを意味する。 Ni単金属粒子を触媒としたときの選択率逆転時の転化率は40%であったが、Feとの固溶体合金(Fe0.5Ni0.5)を形成すると70%に上昇した。合金化によりエチレン選択性が向上することが明らかになった。金属間化合物を形成した合金については、NiAlおよびNiGaがNiより高いエチレン選択性を示した。これらの合金およびNi単金属に対してDFT計算によりd-バンド中心を見積もったところ、合金化によるエチレン選択性向上の要因がd-バンド中心の下方シフトにあり、新生表面が有する高いエチレン選択性が電子的要因により発現することを明らかにした。
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