研究課題/領域番号 |
20K21108
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉田 寿雄 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (80273267)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | クロスカップリング / 光触媒 / ブレンド触媒 |
研究実績の概要 |
光触媒は通常の触媒とは異なる仕組みで化学反応を促進するために,これまでの技術では困難であった化学反応を実現する可能性を秘めている.光触媒による脱水素的クロスカップリング反応(DCC反応)は,常温で余分な試薬を消費せずに,2つの有機分子のそれぞれの炭素-水素結合を切断して炭素-炭素結合による目的生成物と水素分子を直接合成できる.最近,研究代表者は,酸化チタン光触媒とパラジウム触媒を物理混合した「ブレンド触媒」が有機化合物と芳香環との間のDCC反応を促進することを発見した.そこで本研究では,このブレンド触媒による反応機構を解明し,ブレンド比やパラジウム触媒を最適化して高活性化を達成し,さらには,ブレンド触媒の特徴を活かして他の光触媒的DCC反応にも展開することを目指している. 本年度は,メタノール改質反応をモデル反応として,流通系反応装置で光触媒と金属触媒を空間的に分離した状態でも反応が進行することを示すことに成功した.すなわち,上流に酸化チタンを置き,下流に金属触媒を置いて,メタノールからの水素生成速度を測定したところ,水素生成が確認された.これは,光触媒によって生成したラジカル種が,下流の金属触媒によってカップリングを起こしたことを示すもので,ブレンド触媒のうちの光触媒と金属触媒の役割は独立にあって,かつ,ラジカル種はそれなりに安定に金属触媒まで移動できることを示しており,反応機構のうちの最も重要な点を明らかにすることができたことになる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の1年間に,ブレンド触媒の反応機構を明らかにする1つの実験に成功した.
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今後の研究の推進方策 |
今後も反応機構の解明に向けた実験を加えると同時に,最適化による高活性化と他のクロスカップリング反応やその他の反応への応用にも挑戦したい.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で学会等がオンライン開催となり,旅費が大きく減少したことが主な理由として挙げられる.
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