酸化グラフェン(GO)の光電子物性は、導電性のsp2ドメインと、酸素官能基が接続された絶縁性のsp3ドメインで構成されるナノ構造で支配される。特にsp2ドメインのサイズや空間分布は、電気伝導や発光などGOの機能性を決定する主な要因となるが、それらナノドメインを微視的に評価できない問題を抱えていた。例えば、ナノ構造の物性を個々に評価できるツールとして走査トンネル顕微鏡(STM)が挙げられるが、絶縁性ドメインを含むGOは導電性が低いためSTMで観察できないとされていた。我々のグループでは、水の除去と単層観察によりこれまで不可能とされていたGOのSTM観察に成功し、これまでのGO研究の概念を覆した。ここで、STMナノスペクトロスコピーがブレークスルー技術となり、振動・電子状態や光物性などGOの機能性に関わるナノ物性が一気に解明される挑戦性の高い本研究の着想を得た。 本研究課題では、一つ一つの原子や分子の特性を個々に調べることができるSTMスペクトロスコピーを駆使して、GOのナノ光電子物性を解明することを目的とした研究を行った。研究3年目となる令和4年度では、STM発光などの計測をSTMの構造計測と組み合わせることで、ナノスケール領域で局在したGOの発光ドメインの存在を明らかにすることができた。研究期間全体を通して、本課題で設定した①GO固定基板の開発、②GOの局所的な電子状態の解明、③GOの局所的な光電子物性の解明に関する成果を得ることができた。
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