研究課題
本研究では、半導体ドット中の単一磁性スピンと格子振動との結合を調べることを目的としている。CdTeドット中のCr原子1個の磁性スピンを対象に、表面弾性波(SAW)により時間的に変動する格子歪を加え、Crスピン準位間の遷移を検証し、フォノンを媒介としたCrスピン制御の手法を開拓することを目指して研究を行う。今年度は以下の研究を行った。(1) Cr原子1個を含むCdTe自己形成ドット(SAD)ドットに対し、SAW発生のための試料構造を作製し、SAW発生下でのフォトルミネッセンス(PL)測定を行った。その結果、単一Crスピンとの相互作用により分裂した励起子発光スペクトルがSAW発生に伴う格子振動により変調を受けるのを検出した。さらに共鳴励起によりCrスピンの特定の状態を生成し、SAWによるCrスピン状態間の遷移の観測を試みた。(2) Cr原子1個を含むCdTe SADにおいては、Cr原子が電気的に中性である2価のイオン(Cr2+)状態のほかに、正に帯電した1価のイオン(Cr+)状態にある場合も見つかっている。後者では、ドットに束縛された荷電励起子X+のエネルギー準位はCr+との相互作用により分裂し、発光スペクトルは7本以上の発光線から成る。時間分解発光測定によりCr+-X+結合状態のスピンのダイナミックスを調べ、共鳴励起下の光ポンピング効果によるCrスピン準位の空乏化や非共鳴励起下での熱平衡分布への回復などの現象を明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
CdTeドット中の単一CrスピンのSAWによる変調を検出できたため。
Cr原子1個を含むCdTeドット試料に対してSAW発生下の発光測定を行い、格子振動によるCrスピン状態間の遷移を観測する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (3件)
Physical Review B
巻: 104 ページ: L041301
10.1103/PhysRevB.104.L041301