研究課題
脳機能における記憶の形成メカニズムを分子レベルで理解し、解明することは、生命科学において重要な研究課題の1つである。脳神経科学のこれまでの研究から、カルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII(以下, CaMKII)は、薬理学的実験やノックアウトマウスの実験より、神経細胞内の“記憶タンパク質”と推定され、あらゆる研究手法を用いて、その詳細が調べられてきた。特に、記憶形成の細胞基盤といえるLTPの誘導には高頻度のCa2+刺激を積算できる機構が必要であり、CaMKIIがもつ特徴的な12量体構造がその役割を果たすと考えられてきたが、その詳細な分子作動メカニズムは不明であった。本研究は、高速原子間力顕微鏡(以下, 高速AFM)を用い、12量体中の個々のCaMKIIの活性化状態をリアルタイムで可視化することで、“記憶タンパク質”CaMKIIがもつ信号積算(記憶)メカニズムを解明することが目的である。最終年度は、これまで高速AFM観察を適用してきたRat由来のCaMKIIαだけでなく、動物の進化の過程で初期にあるC. elegansやhydra由来のCaMKIIαに対しても高速AFM観察を適用し、動物種間において、多量体の構造に違いがあるのか、キナーゼドメインの運動性に違いがあるのかを調べた。その結果、full phosphorylation状態において、多量体内の構造に大きな違いがあることを見出した。これまでの2年間の結果を統合して、CaMKIIが持つ信号積算分子メカニズムのモデルを提唱し、論文投稿へ至った。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
Cell
巻: 185 ページ: 672-689
10.1016/j.cell.2022.01.007
ACS Applied Materials & Interfaces
巻: 13 ページ: 54817-54829
10.1021/acsami.1c17708
https://bioafminfi.w3.kanazawa-u.ac.jp/