研究課題/領域番号 |
20K21137
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
白澤 徹郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 上級主任研究員 (80451889)
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研究分担者 |
Voegeli Wolfgang 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (90624924)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | ナノ材料 / 小角X線散乱 / X線吸収分光 / ナノスケール構造 / 局所構造 / 放射光 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、従来は個別に行われていた小角X線散乱測定とX線吸収スペクトル測定を同時かつ高速に測定する技術の開発である。これにより、ナノスケール構造と注目元素の化学状態・原子スケール局所構造情報の同時高速取得(時間分解能10~100ミリ秒)を可能にし、反応中の触媒ナノ粒子のナノスケール構造情報および活性元素の化学状態・局所構造の同時観察察などのオペランド・マルチスケール観察法として、幅広い分野への波及を狙う。本年度は、昨年度に開発した波長分散型小角X線散乱計測システムを用いて取得した、Pt箔、Ptナノ粒子、およびPt被覆したPdナノ粒子における、小角X線散乱スペクトルと透過過X線吸収スペクトルの同時測定データの検証を行った。まず、これら3種の試料について、従来の単色平行X線を用いた方法で、X線吸収スペクトルおよび小角X線散乱データを取得した。次に、従来法で得られた測定データと、新規開発した波長分散型小角X線散乱法を用いて測定したデータを比較・検証した。その結果、透過X線吸収スペクトルは良好なデータが得られていることを確認できたが、小角X線散乱データについては、バックグラウンドの影響で散乱角が大きな領域の信号が十分に測定できていないことが判明した。検証の結果、バックグラウンドの原因が、検出器前に設置している透過X線の減衰版からの散乱X線であることをつきとめ、減衰版の形状を工夫するとともに、散乱X線のビームパス窓材をより散乱を生じない材料に変更することで、バックグラウンドを大幅に低減することに成功し、上記3種の試料について、より良好なデータの取得に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス禍の影響で、本研究を行う上で必須である放射光施設への出張が困難であったことに加え、所属機関での出向により研究業務に割ける時間が大幅に減少したため、当初予定していた実験・解析を行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画していた研究内容を遂行する。昨年度取得した高品質データについて、小角X線散乱スペクトルの解析法を新たに開発し、本研究のゴールである、粉体試料におけるナノスケール構造と注目元素の化学状態・原資スケール局所構造情報の同時取得法として確立させる。また、Pt被覆したPdナノ粒子試料を触媒電極として用いて、燃料電池の酸素極を模擬したオペランド観察を行い、電位を変化させながら電気化学データと小角X線散乱スペクトルの時間変化を測定し、電荷移動量、表面Pt原子の酸化状態と原子結合距離、溶出・再析出による粒子の肥大化などの情報を抽出して、触媒劣化機構について新たな知見を得ることを試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
【理由】新型コロナウイルス禍の影響で、放射光施設への出張が困難であったことに加え、所属機関での出向により研究業務に割ける時間が大幅に減少したため、当初予定していた実験・解析を行うことができなかったため。 【使用計画】主に試料セルに係る消耗品費や旅費に充当し、年度末までに全て適切に執行する。
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