研究課題
NMR信号強度は対象原子核の核スピン偏極度に比例するが、室温、数テスラの実験条件では核スピン偏極度が10-5程度と低く、通常法による1原子層相当試料のNMR分析は困難と考えられている。対象原子の核スピン偏極度を向上させNMR信号を増強させる超偏極NMR法が知られており、本研究では水素原子核をスピン偏極させた分子ビームを表面に照射して分子を吸着させ、吸着分子のプロトンNMR信号を検出する方式での超偏極NMR実験の実現を目指している。計画3年目の2022年度は、核スピン偏極分子ビーム装置に以下の改造を施した。水素原子核由来の微小な磁気モーメントの分子を六極磁子により収束させるのに必要な六極磁子長は分子の運動エネルギーの1/2乗に比例し、メタン分子の場合、1m程度の六極磁子に対し、20meVの低運動エネルギーの超音速ビームが必要である。質量数の大きい希ガスと対象分子の混合ガスを液体窒素で冷却したノズルから断熱膨張させる方式で低エネルギー分子線を生成する計画であったが、ビーム強度が低く、ノズル温度制御が難しい問題があった。そこでノズルを冷凍機により冷却し、重希ガスを用いることなく、低エネルギー超音速ビームを生成する方針に変更し、小型スターリング冷凍機でノズルを温度-100℃程度に冷却できるビーム源を作製し、純メタンガスの核スピン偏極ビームを生成できるようにした。開発したNMR実験専用の冷凍機冷却型ビーム源はNMR計測部に接続し、RFコイル間隙に位置調整した試料表面にビームを照射できる環境を整えた。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
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