研究課題
電池等の機能発現に重要な「固体内のイオンの拡散運動」をミュオン素粒子を用いて調べる研究である。特に正のミュオン素粒子と負のミュオン素粒子の両者を使い、その性質の相違を活用して、試料中で拡散するのがミュオンではなくイオンであることを確認しながら、イオンの拡散係数を測定する。各種電池材料の測定から、イオンの拡散を律する要因を抽出し、より良い電池材料の開発につなげる。以下の電池材料、Li[Ni0.5Mn1.5]O4とLi4Ti5O12(共にスピネル構造)とLiMnPO4(オリビン構造)について、正と負のμSRにより、室温以上での拡散種がLi+イオンであることを確認した。またLi金属のμ-SRを広い温度範囲で測定した結果、ミュオニックLi(Li核に捕獲されたμ-)からのμ-SR信号は時間依存しないバックグラウンドとして扱えることが明らかとなった。これによりμ-SRスペクトルの解析は極めて容易となった。また同一試料を正と負のμSRで測定する「μ+-SR」を世界で初めて実施し、この手法を確立した。また電池材料のみならず、超伝導材料中の内部磁場測定にもμ+-SRが有用であることを示した。μ-SRによる拡散種同定と平行して、動作状態の電池内での拡散測定を行うと言う野心的な「オペランド測定」にも挑戦した。その結果、LiCoO2とLi金属電池、Na0.7CoO2とNa金属電池において、充放電による自己拡散係数の変化を明らかにした。本測定手法は全固体電池にも適用できるので、今後更に利用が拡がると予想している。
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すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 6件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
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