固体内で「核磁気を有するイオン」の拡散を検出する手法に、正電荷のミュオン素粒子を使うミュオンスピン回転緩和(muSR)法をがある。物質に打ち込まれた正ミュオンは格子間位置に止まり、イオン拡散に伴う核磁場の揺らぎを検出する。しかし高温では、物質によらず正ミュオン自身も拡散するので、状況は複雑となる。一方、負電荷のミュオン素粒子は、結晶格子を形成する原子に捕獲され、その位置で高温まで安定である。従って、正負ミュオンの両者で、同様な核磁場の揺らぎが検出されれば、その原因はイオン拡散と決定できる。そこで代表的なLi電池材料中の拡散挙動を正負のmuSRで調べ、イオン拡散を検出していることを確認した。
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