研究課題/領域番号 |
20K21151
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小澤 祐市 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (90509126)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | ワイドバンドギャップ半導体 / ニードル顕微鏡法 / 他光子励起 / 3次元イメージング |
研究実績の概要 |
前年度までに、窒化ガリウムからのフォトルミネッセンスに対して、空間光変調器を用いた波面制御によってエアリービームに変換し、発光点の深さ位置に応じて検出面での面内方向シフトが可能であることを実証した。一方で、窒化ガリウムのフォトルミネッセンスは紫外波長域であるために、現状の可視・近赤外に対応したレーザー顕微鏡系では信号強度が低下する問題があった。そこで本年度は、紫外波長域に対応したフォトルミネッセンスイメージング系を新規に構築し、信号強度の向上を図った。構築したシステムでは、波長1040 nmのフェムト秒パルスレーザーを励起光として、ピエゾステージ走査型のイメージングシステムを構成し、検出信号を空間光変調器によりエアリービームに変換した。変換された信号光の強度分布を、ステージ走査に同期して高感度2次元検出器により測定した。 ニードル状の励起スポット照射下において、エアリービームに変換された紫外域のフォトルミネッセンスは、その深さ位置に応じて面内方向にシフトすることを確認した。また、ピエゾステージの2次元走査により得られた一連のエアリービーム変換像から3次元画像構築を試みた結果、窒化ガリウムの貫通転位の3次元的な分布を逆コントラストの像として良好に可視化することに成功した。また、構築した3次元像について、通常のガウスビームを励起光とした多光子励起画像と比較し、同様の転位像が得られることがわかった。本イメージング実験では、深さ方向に空気換算で10ミクロン程度の範囲を1回の2次元走査で画像取得できており、高速な3次元イメージングとしての実現可能性を示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の研究において懸案事項となったイメージングシステムの紫外波長域への対応については、本年度中に新たにイメージングシステムを構築し、対応を完了した。構築したシステムを用いることで紫外波長域においても十分な信号強度が得られることも確認しており、当初の狙い通りの3次元イメージングの実現可能性を実証することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本課題で提案した、収差補正の理論的な検討およびイメージングシステムの構築が概ね順調に進み、半導体内部における転位の3次元イメージングが可能であることも確認された。本結果をベースに、様々な条件での半導体試料の観察実績を蓄積するとともに、取得データの解析と従来法との比較を進め、成果としてまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
紫外波長域対応の3次元イメージング系の構築により、研究開始時の想定よりも十分な信号強度が得られることがわかり、3次元可視化性能について、より詳細に実験を遂行し、検討を進める必要が生じた。次年度使用額は、次年度における追加実験のための消耗品費と成果発表、論文投稿に必要な経費に使用する。
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