研究課題/領域番号 |
20K21154
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
吉田 浩之 大阪大学, 工学研究科, 講師 (80550045)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 液晶 / トポロジカル欠陥 |
研究実績の概要 |
今年度は液晶における異物質の結晶化挙動について調査を継続し、(1)液晶溶媒における有機半導体の結晶化における温度の影響を明らかにするとともに、(2)ヘッジホッグと呼ばれる新しい種類の特異配向場の形成に成功した。また、(3)汎用液晶に高い相溶性を示しながら高い量子収率で発光する蛍光材料および紫外光照射により青色に呈色する新材料の開発に成功した。 (1)液晶に有機半導体を少量添加し、液晶相において静置すると、周囲の配向場の影響を受けて結晶成長することを見出した。今年度は液体相から結晶相へ転移させる温度を変えると、成長する結晶の形状が大きく変化することを見出した。相転移を低速に生じさせた場合には単結晶が生じる一方、急激に相転移を生じさせた場合には針状の結晶が生じたことから、相転移の速度が結晶の核生成に影響することが明らかになった。 (2)液晶における結晶化挙動を制御する試みとして複雑な配向場の形成に取り組み、ヘッジホッグと呼ばれる配向特異点の安定化に成功した。ヘッジホッグの形成について実験および理論の観点から取り組み、安定化の機構を物理的に明らかにすることに成功した。これにより、液晶中の特異配向場が結晶化挙動に及ぼす影響を調べる新たな基盤技術の開発に成功した。 (3)分子設計により、汎用液晶に高い相溶性を示しながら発光および光吸収を示す材料を開発し、基礎物性を評価した。これらの材料をプローブとして用いることで、液晶における異物質の輸送に関する知見が得られるものと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
液晶における結晶化挙動について温度の依存性、および特異配向場の生成という新しい科学的成果を得ており、これらに基づいた新しい展開が期待される。このことから、研究はおおむね順調に進展していると判断する。また、本研究では液晶における生体分子等の結晶化にも取り組む予定にしており、生体分子の添加も並行して取り組んでいる。生体分子は液晶への相溶性が高くないため、適切な材料の選定については今後も取り組む必要があるが、継続検討により進展が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
液晶における異物質の結晶化について検討を継続し、その制御を目指す。昨年度開発したプローブ分子を用いることで液晶における分子の動きに関する知見を得ることを目指し、特異な配向場の形成によってその制御を試みる。液晶への生体分子の添加も継続し、液晶配向場を用いた結晶成長の実現を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により、共同研究先への来訪や研究者受け入れによる支出が無くなった。また、共同研究者からの材料提供があったことや、一部の実験用器具は既存の大学設備および3Dプリンターを用いた作製物で代用できたため物品購入が不要となり、支出額に差が生じた。 使用計画: COVID-19が落ち着けば、共同研究先への訪問や対面での研究者交流などを実施する予定であるため、未使用額の一部はこの経費に充てる。しかし社会情勢的に困難な場合は、結晶化挙動の観察の試行回数を増やしてデータの客観性を高めることを優先するため、消耗品の購入に充てる。加えて、本研究では当初想定していなかった新しい実験結果も得られていることから、成果の外部発表費用にも使用する予定である。
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