本研究では液晶を液状でありながら構造をもつ構造化溶媒とみなし、種々の異物質の結晶化共同について調査を継続している。今年度は(1)ねじれ配向した液晶溶媒における有機半導体結晶の結晶化挙動を調べるとともに、(2)液晶中にゲスト分子を添加した液晶の相転移近傍での振る舞いを調べることにより、異物質の凝集挙動を調査した。また、(3)昨年度安定化に成功したヘッジホッグと呼ばれる配向特異点の微細構造についてシミュレーションにより明らかにした。 (1)液晶に有機半導体を少量添加し、液晶相において静置すると、周囲の配向場の影響を受けて結晶成長することを見出した。液晶素子にねじれた配向を付与した場合、形成される結晶がねじれる場合があることを見出した。このことから、等方溶液中では実現の難しい結晶形状が液晶中で得られる可能性が示唆された。 (2)液晶にゲスト分子を添加し、相転移近傍の挙動を確認すると、ゲスト分子が素子内部で配向秩序の低い領域に移動する現象が見られた。このことから、液晶溶液における構成分子の相溶性の違いにより、溶液中で相分離が生じていることが明らかとなった。 (3)液晶における結晶化挙動を制御するために複雑な配向場の形成に取り組み、ヘッジホッグと呼ばれる点状の液晶配向特異点の安定化に成功した。作製した素子について配向場シミュレーションを行い、ヘッジホッグの微細構造を明らかにした。
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