偏光角度と時間の写像を利用して時間応答性の低いイメージセンサーで失われる時間情報ナノ秒の時間分解能で復元し、高い空間分解能を維持したまま空間分解の質量スペクトルを非走査で高速に取得することが可能な投影型イメージング質量分析法装置の開発を行うことが本研究課題の研究目標であった。 最終年度は、偏光-時間写像法を用いたマルチ質量イメージング計測手法の開発およびイベント駆動型イメージセンサーを用いた運動量画像計測を行った。空間分解能を劣化することなく輝度の増強をが可能であるイメージダイオードを用いた蛍光強度の増強で、偏光イメージセンサーに入射する光強度の増強を達成した。また、イメージダイオードの出力波長は410 nmであり、PLZTを用いた電気光学光変調器の光透過率を約2倍に改善することができた。これらによって、偏光イメージセンサーに入射する光強度を増強できたことにより、偏光角度の決定精度が向上した。さらには、積分球を用いた偏光イメージセンサーの均一照明により、偏光イメージセンサーの各ピクセルのキャリブレーションを実施し、偏光角度の決定精度を改善した。偏光-時間写像法では、偏光角度の決定精度が質量情報の決定精度に対応するため、質量イメージング計測法における質量分解能を向上したことに対応する。 イベント駆動型イメージセンサーにおけるタイムスタンプを1マイクロ秒まで改善するためには、イメージセンサーに入射する光強度の増強が必要であったが、イメージダイオードを用いたことによって、閾値以上の輝度を有する画素数が増加できたにより、輝点の重心解析による位置精度の決定精度が向上した。また、解析プログラムの高速化により、本研究で用いているフェムト秒レーザーシステムの繰り返し周波数の1 kHzでリアルタイムの輝点重心解析を行うことが可能となった。
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