研究課題/領域番号 |
20K21163
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研究機関 | 公益財団法人未来工学研究所 |
研究代表者 |
佐々木 久郎 公益財団法人未来工学研究所, 研究センター, 研究員 (60178639)
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研究分担者 |
NGUELE RONALD 九州大学, 工学研究院, 助教 (50821401)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 二酸化炭素分離 / 二酸化炭素固定 / ケイ酸ナトリウム / 浅帯水層 / 温暖化ガス / CO2地中貯留 / ゲル |
研究実績の概要 |
本研究は、メタケイ酸ナトリウム水溶液に亜臨界圧でCO2を溶解させることで炭酸ナトリウムゲルが容易に生成され減圧後も安定であることから、深帯水層に匹敵する貯留ポテンシャルを持つ300-400mの浅帯水層にCO2を安全に固定できるシステム開発を実施している。とくに、メタケイ酸ナトリウム溶液のCO2ガスの吸収・分離特性、温度と圧力によるゲル化時間や強度および安定性を調べ、燃焼ガスからCO2を選択的に吸収させてゲルとして分離・輸送し、浅帯水層への圧入するシステムにおける物質バランスを実験的に確認し、CO2の固定化システムを新たに提示することを目標として実施している。 本年度は、前年度に実験的に測定したメタケイ酸ナトリウム水溶液にCO2を混合させたガスを高圧条件で溶液中バブリングすることで生成させた炭酸ナトリウム(Na2CO2)ゲルの質量バランスとラマン分光分析結果の測定結果をまとめ、最適生成条件を調べた。また、浅帯水層へのCO2固定システムにおける各要素と全体の経済性評価の基本的な構成を構築した。とくに、炭酸ナトリウム(Na2CO2)ゲル生成条件であるメタケイ酸ナトリウム溶液の濃度、温度、CO2ガス濃度およびガス圧、ゲル時間などのパラメータに関する感度分析から、生成条件の最適化の検討を行った。さらに、質量バランスからゲル中のCO2含有割合および流動特性(見掛け粘性)および安定性試験を実施し、CO2ガスの分離回収率および圧入システムの構成と実現性について、異なる物質を対象としたプラント性能などの資料収集による検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度においては、前年度に測定した炭酸ナトリウム(Na2CO2)ゲル生成条件であるメタケイ酸ナトリウム溶液の濃度、温度、CO2ガス濃度およびガス圧、ゲル時間などのパラメータの感度分析をおおむね研究計画に沿って実施し、CO2回収・地中貯留システム設計に必要なデータベースの構築を行った。とくに、メタケイ酸ナトリウム濃度1~7%の水溶液にCO2ガス圧力1-7MPaで溶解させた系において、質量バランスからゲル中のCO2含有割合および流動特性(見掛け粘性)および安定性試験および生成したゲルのSEM 写真から、高分子構造を有する炭酸ナトリウムゲルを安定な地中固定化物質として的に貯留でき、例え減圧を伴う環境条件の変化後も安定な貯留状態で維持できることを明らかにできた。なお、研究遂行過程において、カンボジアおよび中国の研究協力者との研究成果を共同で公表した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度には、1~7%のメタケイ酸ナトリウム水溶液とCO2ガス圧力1-7MPaで溶解させるCO2回収・地中貯留システムの構築を実施する。さらに、各種地質データや陸域および近海の浅帯水層の平均的な特性(浸透率や孔隙率)を考慮した地層・貯留層モデルを構築し、ゲル生成特性に基づいた圧入圧、圧入レート・時間、貯留領域などの数値シミュレーションを実施し、CO2固定量を算定する。また、国際会議などにおいて本CO2固定化システムの評価を行うほか、最終年度であることから報告書を作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの感染状況により、出張による対面形式での国内外での学会などでの成果発表が制限された。とくに、海外での国際会議出席に関し、発表出入国時の水際対策を考慮した結果、やむを得ず出張を中止したため、予定した国内旅費のび海外旅費の使用額に相違が生じた。そのため、2022年度における成果発表のための旅費として計上し、研究計画の変更を行った。
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