研究課題/領域番号 |
20K21166
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高橋 聡 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (30283641)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | 高速蛍光相関分光法 / 全光子time-tag測定法 |
研究実績の概要 |
一分子蛍光の強度ゆらぎを観測する高速蛍光相関分光法は、ナノ秒からマイクロ秒に至る時間領域におけるタンパク質のダイナミクス情報を得られる強力な手法である。しかし、従来法の蛍光検出技術の効率は悪く、十分なS/Nにおける観測は難しかった。本研究は、オリジナルの光学系と最新の測定機器を組み合わせた全光子time-tag測定法を開発し、蛍光検出効率を二桁向上させることを目標とする。 令和2年度において本装置開発の中心部品となるデジタル型高速光子計数ボードを導入し、装置をコントロールするためのPCとの接続を行った。導入した高速光子計測ボードを、すでに研究室において組み上げている共焦点型の光学系に組み合わせるための開発を行った。 ナノ秒領域における高速蛍光相関観測の具体例として、従来法を用いた観測を実施した。ポリアラニン鎖にドナー色素とアクセプター色素を修飾した試料を用意し、一分子蛍光観察を行った。その結果、ドナー色素の蛍光強度揺らぎにおいて、数十ナノ秒の時定数を持つ運動を観測することができた。この運動は、ポリアラニン鎖のヘリックスコイル転移による可能性がある。しかし、ドナー色素とアクセプター色素の強度揺らぎの反相関が観測されなかった。また、溶液の粘土依存性を調べたが、顕著な依存性が観察されなかった。このため、ドナー色素の強度揺らぎとして観測された運動は、二つの色素間の距離揺らぎでは解釈できない可能性があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りに本装置開発の中心部分の開発と予備測定を進めた。これは予定通りの進展である。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は本装置開発をさらに進め、全光子time-tag観測を成功させる。現在のところ装置のエレクトロニクス部分の接続が完成し、蛍光信号の検出が可能である。今後実際の試料を用いた観測を進める予定である。 さらに、タンパク質試料を用いたナノ秒領域の蛍光相関観測を進める。具体的な測定対象として、ヘリックスコイル転移の観測が期待されるポリアラニンペプチド、DNA結合特性を持ち結合前は変性構造、結合後は折り畳まれた構造を持つCytR、線虫の生殖細胞内に発現し液液相分離を示すLAF-1などの試料を想定している。それぞれの試料の二重蛍光色素ラベル化はすでに完成しており、平衡条件構造についての基礎データをすでに得ている。旧手法による予備実験を進めるとともに、新しい手法による観測とデータ解析が可能になり次第、新手法での測定を行い、二つの手法の比較を行う。 以上の研究努力により、装置のおよび実験手法の完成を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度において、新しくMCSモジュールを導入して実験装置の組み立てを行った。予算申請調書に記載した通り、MCSモジュール以外の実験機器はすでに研究室に所有していたため、この支出以外の支出がない状態である。また、全光子タイムスタンプ測定の参照条件となるように、従来の手法によるns-FCS測定を実施し、予想外のデータが得られたために幾つかの追加実験に時間を要してしまった。令和3年度は繰り越した予算を用いて新しい試料の作成と補助的な実験装置の開発を行う予定である。
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