研究実績の概要 |
本研究課題は、単分子磁石研究で培った合成開発指針を、高次元配位高分子の磁性体“RERF”(希土類-ラジカルフレームワーク)へ適用するものである。 室温においても三重項分子としてふるまうビスニトロキシドを架橋配位子として用いる検討を進めた。無限ポリマー状錯体として2例を実際に得ることができ、日本化学会春季年会(2022年3月)において報告した。本科研は萌芽的研究課題であったため、論文出版とするには少し時間が足りなかったが、速報向けの投稿を済ませた段階にある。重希土類イオン Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb の置換体が全て同形結晶を与え、そのうちTbイオンのものが磁気ヒステリシスを描くことを明らかにした。また、4f イオンだけを含む「光る磁石」の開発を進め、Crystals 誌へ発表した。 ヘテロスピン自動集積型錯体の開発の一環として、希土類と遷移金属イオンを1対3で含有し、なおかつ事前組織化を不要とする錯体を得た。その構造と磁性を明らかにし、特に遷移金属イオンとして銅(II)、ニッケル(II)を用いた物質は強磁性的カップリングを示した。ここにはまだ 2p スピンは導入されていないが、合成原理としては今後の研究の一助となるものである。一連の研究はニュージーランドのマッセイ大学との国際共同研究として実施され、成果は Dalton Trans., ACS Omega, および RSC Adv. に発表された。 2p-3d-4f ヘテロスピンを一気に自動集積させる企画では、予期に反してキュバン型構造を与えた。この成果はCrystals に発表された。
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