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2020 年度 実施状況報告書

一重項励起子分裂による量子テレポーテーションの実現

研究課題

研究課題/領域番号 20K21174
研究機関神戸大学

研究代表者

小堀 康博  神戸大学, 分子フォトサイエンス研究センター, 教授 (00282038)

研究期間 (年度) 2020-07-30 – 2022-03-31
キーワード四電子系量子もつれ / 量子テレポーテーション / 励起子分裂 / 時間分解電子スピン共鳴 / 電子スピン分極 / 多重励起子 / コヒーレンス / デコヒーレンス
研究実績の概要

将来の超高効率光エネルギー変換系のデバイス応用に期待が高まっている一重項励起子分裂(Singlet Fission: SF)を、量子コンピュータにおける光入力による四量子ビットの基本構成単位として活用するための基礎研究を行う。時間分解電子スピン共鳴法をSF材料による固体薄膜、単結晶および連結系分子に適用し、励起子分裂(S1 + S0→T1 + T1)で生成する解離多重励起子のスピン量子状態遷移による量子もつれを具体的に特徴づけるため、固体薄膜系において時間分解電子スピン共鳴計測を行い、SF後の一重項励起子対解離で生成する電子スピン分極に対する温度効果を観測した。これによって得られた電子スピン分極の変化が見られたが、これは当研究グループで独自に表したスピン量子もつれを基軸とするスピン相関三重項対モデルを実証するものであった。さらにペンタセン連結ダイマーやテトラセン連結ダイマーについて、時間分解電子スピン共鳴計測をおこなうとともに、多重励起子生成直後の分子内振動効果を考慮に入れた電子スピン分極解析を行った。これにより五重項多重励起子の生成に対し有効となる分子内振動モード、立体配置が明らかになった。さらにスピン相関三重項モデルによる解析をすすめ、分子内でT+Tによる完全解離状態での立体構造と電子的相互作用を明らかにすることにも成功した。この完全解離について、五重項励起子の解析で明らかになったねじれ振動運動が活性化因子として役割を果たすことが明確になった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

すでに、四量子ビット系に拡張させた三重項励起子対によって生成する電子スピン分極モデルによる時間分解電子スピン共鳴スペクトルの解析プログラムを完成させている。分子内励起分裂で生成する電子スピン分極モデルを論文に報告している。分子内連結系では、分子内ねじれ振動による五重項状態への変換と運動によるデコヒーレンスによる分極生成、また、これに後続する励起子解離による量子もつれに移動が確認され、各状態の立体構造が示された。よって当初の計画以上の進展がみられた。

今後の研究の推進方策

研究協力者の羽曾部より提供を受けるペンタセンオリゴマーを用い、時間分解電子スピン共鳴計測による四量子ビット系の量子もつれの転送効果を観測する。さらにこのオリゴマーにおけるT+T解離で生成したスピン相関三重項対において、スピン量子コヒーレンスの時間発展の観測とマイクロ波による制御を行う。

次年度使用額が生じた理由

年度途中より、学術領域変革(A)の研究課題が採択となり、このための研究計画および当該研究の目的に重要なパルスESR装置を次年度に購入することになった。このための使用に必要な経費を次年度使用額としたものである。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (11件)

  • [雑誌論文] Fast T-Type Photochromism of Colloidal Cu-Doped ZnS Nanocrystals2021

    • 著者名/発表者名
      Han Yulian、Hamada Morihiko、Chang I-Ya、Hyeon-Deuk Kim、Kobori Yasuhiro、Kobayashi Yoichi
    • 雑誌名

      Journal of the American Chemical Society

      巻: 143 ページ: 2239~2249

    • DOI

      10.1021/jacs.0c10236

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Organic Photostimulated Luminescence2020

    • 著者名/発表者名
      Sakurai Manabu、Kabe Ryota、Fuki Masaaki、Lin Zesen、Jinnai Kazuya、Kobori Yasuhiro、Adachi Chihaya、Tachikawa Takashi
    • 雑誌名

      ChemRivX

      巻: 1 ページ: 1~1

    • DOI

      10.26434/chemrxiv.12956456

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Geometries and Terahertz Motions Driving Quintet Multiexcitons and Ultimate Triplet?Triplet Dissociations via the Intramolecular Singlet Fissions2020

    • 著者名/発表者名
      Kobori Yasuhiro、Fuki Masaaki、Nakamura Shunta、Hasobe Taku
    • 雑誌名

      The Journal of Physical Chemistry B

      巻: 124 ページ: 9411~9419

    • DOI

      10.1021/acs.jpcb.0c07984

    • 査読あり
  • [学会発表] Photon-to-Energy Conversion Mechanisms Revealed by Quantum Effects on Electron Spin Polarization2020

    • 著者名/発表者名
      Yasuhiro KOBORI
    • 学会等名
      2020年光化学討論会
  • [学会発表] 有機薄膜中のシングレットフィッションによる多重励起子解離機構:時間分解 EPR 法を用いた解析2020

    • 著者名/発表者名
      松田 紗季 、婦木 正明 、小堀 康博
    • 学会等名
      2020年光化学討論会
  • [学会発表] 共有結合した二量体における一重項分裂によって生成された五重項励起子の立体配置2020

    • 著者名/発表者名
      婦木 正明 、中村 俊太 、羽曾部 卓 、小堀 康博
    • 学会等名
      2020年光化学討論会
  • [学会発表] 植物 PSII の初期光電荷分離による立体配置と電荷再結合に対する温度効果2020

    • 著者名/発表者名
      尾崎 恭佑、長嶋 宏樹、三野 広幸、立川 貴士、小堀 康博
    • 学会等名
      2020年光化学討論会
  • [学会発表] 有機薄膜中の一重項励起子分裂による五重項多重励起子の生成ドメイン2020

    • 著者名/発表者名
      長友 敬晃、松田 紗季、濱田 守彦、小堀 康博
    • 学会等名
      2020年光化学討論会
  • [学会発表] Fast T-Type Photochromism of Colloidal Cu-Doped ZnS Nanocrystals2020

    • 著者名/発表者名
      Yoichi KOBAYASHI, Morihiko HAMADA, Yasuhiro KOBORI
    • 学会等名
      2020年光化学討論会
  • [学会発表] 分子内一重項分裂によるスピン相関三重項対生成に対する振電効果2020

    • 著者名/発表者名
      小堀康博, 婦木正明, 中村俊太, 羽曾部卓
    • 学会等名
      電子スピンサイエンス学会年会2020
  • [学会発表] 有機薄膜中の一重項励起子分裂による五重項多重励起子の生成ドメイン2020

    • 著者名/発表者名
      長友敬晃, 松田紗季, 小堀康博
    • 学会等名
      電子スピンサイエンス学会年会2020
  • [学会発表] 共有結合した二量体における一重項励起子分裂によって生成された五重項励起子の立体配置2020

    • 著者名/発表者名
      婦木正明, 鈴木悠大, 中村俊太, 酒井隼人, 羽曾部卓, 小堀康博
    • 学会等名
      電子スピンサイエンス学会年会2020
  • [学会発表] 植物PSIIの電荷再結合に対する活性化パラメータの再評価2020

    • 著者名/発表者名
      尾崎恭佑, 長嶋宏樹, 三野広幸, 立川貴士, 小堀康博
    • 学会等名
      電子スピンサイエンス学会年会2020
  • [学会発表] Conformation Changes in Intramolecular Multiexciton Spins2020

    • 著者名/発表者名
      Yasuhiro KOBORI
    • 学会等名
      6th Kanto Area Spin Chemistry Meeting

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公開日: 2021-12-27  

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