研究課題
近年の研究に基づくと、溶液中の金銀合金クラスターが示す触媒反応や光励起性発光の起源の理解には、SC-XRDにより得られる固体状態の幾何構造だけではなく、それらの溶液中での動的挙動も考慮に入れる必要があると思われる。しかしながら、金銀合金クラスターの溶液中での動的挙動に関しては、これまで、殆ど情報が得られてはいない。本研究では、RP-HPLCとESI-MSを組み合わせることで、[Au38-xAgx(SC4H9)24]0の溶液中での動的挙動を観測することに成功した。その結果、[Au38-xAgx(SC4H9)24]0について、以下の知見が得られた;(1)最近良く用いられているCMCRでは、準安定種も合成され、それらは溶液中にて、クラスター間金属交換を通して、熱力学的に安定な幾何構造へと変化してゆく;(2)同時還元法では、熱力学的に安定なクラスターが主として合成され、それらの間では、クラスター間金属交換は比較的抑制されている。今回観測された現象は、あくまで今回の実験条件にて生じたものであり、同じ[Au38-xAgx(SC4H9)24]0を用いても、その反応速度は、温度、濃度、及び圧力などに依存して異なるであろう。また、配位子の官能基やAg置換数が異なっても、反応速度は異なると思われる。しかしながら、本研究結果は、[Au38-xAgx(SC4H9)24]0、さらには他のAun-xAgx(SR)mクラスターの物性測定とその理解においては、こうした現象も考慮に入れる必要があることを示している。
1: 当初の計画以上に進展している
本課題研究では、金銀合金クラスターの溶液中での動的挙動の解明を目的としている。本年度にて既に、[Au38-xAgx(SC4H9)24]0については動的挙動の解明に成功した。このことから、現在までの達成度を「当初の計画以上に進行している」と自己評価した。
金属クラスターの触媒反応及び光励起性発光の測定を行う。触媒活性については,これらの合金クラスターについて報告のある酸化及び還元反応に対して測定を行う.発光特性に関しては,各温度での量子収率と蛍光寿命を中心に解明に取り組む。これらの測定に際しては,既に共同研究を開始している,リヨン触媒環境研究所・Aude Demmesence博士(研究協力者)の協力を受ける.得られた結果を上述の動的挙動に関する結果とつきあわせることで,動的挙動が触媒反応及び光励起性発光に与える影響を解明する.
昨年度はコロナの発生により成果発表を殆ど行うことができなかった。そのため、研究費の一部を本年度予算に繰り越した。
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