これまでの研究より、配位子交換にてNCsの骨格構造に変形を誘起すると、前駆体とは異なるチオラート(SR)保護金ナノクラスター(Aun(SR)m NCs)をサイズ選択的に合成できることが明らかにされている。本研究では、[Au25(SC2H4Ph)18]-;(SC2H4Ph = 2-フェニルエタンチオラート)と4-tert-ブチルベンゼンチオール(tBuPhSH)の反応をモデル配位子交換反応として選択し、反応させるチオールの量、前駆体NCsの中心原子、もしくは反応時間を従来研究から変化させることで、新たな生成物を得ることに取り組んだ。その結果、以下の知見が得られた。(1)[tBuPhSH]/[SC2H4Ph] = ~100の比にてtBuPhSHを加え、40 ℃で2時間反応を進行させると、[Au23(SPhtBu)17]0が高い割合にて生成する。(2)[Au25(SC2H4Ph)18]-8211;の中心原子をパラジウム(Pd)に置換し([Au24Pd(SC2H4Ph)18]0)、[tBuPhSH]/[SC2H4Ph] = ~250 の比にてtBuPhSHを加え、室温にて8 時間反応を進行させると、[Au26Pd(SPhtBu)20]0が高い割合にて生成する。(3)[Au25(SC2H4Ph)18]-;の中心原子を白金(Pt)に置換し([Au24Pt(SC2H4Ph)18]0)、[tBuPhSH]/[SC2H4Ph] = ~250の比にてtBuPhSHを加え、室温にて2時間だけ反応を進行させると、[Au24Pt(SC2H4Ph)7(SPhtBu)11]0が高い割合にて生成する。これらの結果は、チオール量、中心原子、及び反応時間を制御すれば、配位子交換反応における反応経路と生成物の化学組成を変化させられることを示している。
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