• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2020 年度 実施状況報告書

メソ物質における電気磁気双極子遷移の可視化と光学特性制御への応用

研究課題

研究課題/領域番号 20K21179
研究機関早稲田大学

研究代表者

井村 考平  早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80342632)

研究期間 (年度) 2020-07-30 – 2022-03-31
キーワードメソ物質 / 電気双極子遷移 / 磁気双極子遷移 / 光学特性制御 / 近接場光学顕微鏡
研究実績の概要

本研究では,光電場・光磁場の可視化と電気双極子・磁気双極子モードを利用した光特性制御を最終目標としている。光電場・光磁場の可視化では,開口型近接場プローブに発生する光電場と光磁場が,開口からの距離に対して異なる減衰特性を示すことに着目し,開口と試料間の距離をわずかに変調しながら試料の透過スペクトル測定を行うことで光電場と光磁場信号の分離を実現することを計画した。本年度は,この開口型近接場プローブにおける光電場と光磁場の減衰特性を明らかにするために,試料として金ナノプレートおよび金ドーナツ(開口)構造を用いて近接場透過特性の立体的可視化を行った。近接場プローブと試料との距離を変調した透過イメージングを行った結果,波長に依存する特徴的な空間特性が可視化されること,励起モードにより異なる減衰特性を示すことが明らかとなった。現在,観測された特性の起源を明らかにするため,電磁気学解析を進めている。
上記と並行して,可視域において顕著な磁気双極子遷移が誘起される試料としてSiナノ粒子を用いた光特性制御の研究も行った。Siナノ粒子の光学特性を制御することを目的に,Siナノ粒子と金ナノ構造のハイブリット構造を作製し,その光物性評価を行った。電磁気学計算から,ハイブリッド構造では,Siナノ粒子近傍において金ナノ構造に励起されるプラズモンに起因する電場増強が誘起されること,また特徴的な散乱分布を示すことが明らかとなった。これは,散乱光の伝播方向の制御が可能であることを示唆する。さらに,ハイブリッド構造に対し非線形イメージングを行い,ハイブリット構造において二次および三次の非線形性に起因する発光の増大が起こることが明らかとなった。現在,非線形性発光における金ナノ構造の形状依存性の解明を目指し研究を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では,物質と光電場・光磁場との相互作用を可視化し,メソ物質における光磁場応答の増大機構を解明すること,また,電気双極子と磁気双極子の相互作用を利用し,新しい光応答制御を実現することを目的としている。今年度は,可視化と光応答制御のそれぞれの部分について,基礎的検討を行うことを当初の目標とした。前者については,金ドーナツ構造を利用して近接場開口プローブ近傍の光電場と光磁場の空間分布が異なることを明らかにし,光磁場応答の増大機構を解明するための基礎原理を明らかにした。後者については,金メソ構造とSiナノ粒子のハイブリット構造を作製し,線形および非線形分光計測からハイブリット構造が光特性制御の原理検証を行う上で有望であることを明らかにした。これらの研究成果は,今後の研究展開の基盤となるものであり,ともに当初の研究計画にしたがったものとなっている。以上のとおり,当初の研究計画程度の目標を達成していることから,おおむね順調に進展していると判断している。

今後の研究の推進方策

本年度は,物質とメソ物質における光電場・光磁場との相互作用を可視化・解明すること,また,電気双極子と磁気双極子の相互作用を利用して新しい光応答制御を実現することを目的とする。光電磁場の高精度な可視化には,装置の安定性向上が不可欠である。本年度は,装置周囲の温度を一定に保つために,温度制御台を導入する。近接場光学顕微鏡において近接場プローブと試料間の距離をわずかに変調しながら透過光を偏光分離してスペクトル測定を行うことで光電場と光磁場信号の分離を実現することを目標にする。もう一方の研究目標である光応答制御は,金プレートとSiナノ粒子を用いて達成する計画である。具体的には,金プレートにおいて,試料面内に励起されるプラズモンにより円電流を誘起し,面外方向に磁気双極子を誘起する。これとSiナノ粒子において誘起される局在モードと相互作用・干渉させることで光応答の制御を達成する。Siナノ粒子の多量体では,粒子間のギャップにおいて光電磁場増強が顕著となる。これを利用することで,電気双極子-磁気双極子相互作用による増強光電磁場の発生や光伝播制御が可能である。以上の研究目標達成に向けて,今年度も当初の研究計画にしたがい研究を推進する計画である。

次年度使用額が生じた理由

コロナ感染症拡大の影響のため,研究活動がかなり制限された。研究目標を達成するために,原理検証実験を優先して研究を進める必要があった。その結果,当初計画していた機器の導入を本年度中に実施することが困難となった。以上の理由から,機器購入経費を次年度に繰り越し使用することとした。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Near-field transmission and reflection spectroscopy for revealing absorption and scattering characteristics of single silver nanoplates2020

    • 著者名/発表者名
      Mizobata H., Hasegawa S., Tamura M., Iida T., Imura K.
    • 雑誌名

      J. Chem. Phys

      巻: 155 ページ: 144703

    • DOI

      10.1063/5.0025328

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Photoluminescence from Carbon Dot-Gold Nanoparticle Composites Enhanced by Photonic and Plasmonic Double Resonant Effect2020

    • 著者名/発表者名
      Kamura Y., Imura K.
    • 雑誌名

      ACS Omega

      巻: 5 ページ: 29068-29072

    • DOI

      10.1021/acsomega.0c03588

    • 査読あり
  • [学会発表] Interaction of gold nanoparticle assembly with dye molecules at liquid-liquid interface2021

    • 著者名/発表者名
      Atsuko Jimbo, Kohei Imura
    • 学会等名
      日本化学会 第101春季年会(2021)
  • [学会発表] 金ナノキューブに励起されるプラズモンモードの近接場分光特性2020

    • 著者名/発表者名
      乙部隼也・井村考平
    • 学会等名
      2020年度日本分光学会年次講演会
  • [学会発表] Au-Cu2O ナノハイブリッド構造の発光特性のサイズ依存性2020

    • 著者名/発表者名
      板東廣朗・長谷川誠樹・井村考平
    • 学会等名
      2020年度日本分光学会年次講演会
  • [学会発表] 金ナノロッドの光学特性における化学的及び物理的効果2020

    • 著者名/発表者名
      川嶋健哉・今枝佳祐・井村考平
    • 学会等名
      2020年度日本分光学会年次講演会
  • [学会発表] 金メソプレート近傍における励起場と放射場の増強2020

    • 著者名/発表者名
      長谷川誠樹・今枝佳祐・井村考平
    • 学会等名
      2020年度日本分光学会年次講演会

URL: 

公開日: 2021-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi