研究実績の概要 |
本研究では,光電場・光磁場の可視化と電気双極子モード・磁気双極子モードを利用した光特性制御を目的とした。光電場・光磁場の可視化では,開口型近接場プローブに発生する局在光電場と光磁場が,開口からの距離に対して異なる減衰特性を示すことに注目し,開口と試料間の距離を変調しながら透過光を偏光分離してスペクトル測定を行うことで,光電場と光磁場信号の分離を実現する計画とした。この目的に金ナノダイヤモンド構造を作製し試料として用いた。 金ナノダイヤモンド構造を用いた光電場・光磁場の可視化では,近接場透過イメージングを試料表面と開口先端の距離を高精度に制御して行った。また,このとき近接場光を直交する二つの偏光成分(Ex, Ey)に分割し,それらのプローブ-試料表面間の距離依存性を測定した。金ナノダイヤモンド構造は,可視から近赤外域に複数のプラズモン共鳴を示す。偏光分離した測定から,縦偏光と横偏光で特徴的な距離依存性を示すこと,特定の観測波長において直交する二つの偏光の強度比が顕著な距離依存性を示すことが明らかとなった。ナノ構造の近接場領域で観測される信号は,光電場と光磁場に由来する。電気双極子モードのみが励起される場合は,直交する二つの偏光強度比は開口と試料表面間の距離に依存しない一方,磁気双極子モードが励起される場合は,二つの偏光の強度比は開口と試料間の距離に依存すると考えられる。観測結果は,光電場と光磁場の信号検出を達成していることを示す。現在,多変量解析などを組み合わせた光電場と光磁場の分離を検討している。これ以外に,本研究では,電気双極子-磁気双極子相互作用による増強光電磁場の創出が達成できる可能性があり,金ワイヤとSiナノ球のハイブリット構造において,著しい増強が起こること,光学特性制御が達成されることを明らかにした。
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