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2020 年度 実施状況報告書

仕事関数測定による表面吸着分子の非平衡電子ダイナミクス解析

研究課題

研究課題/領域番号 20K21180
研究機関国立研究開発法人物質・材料研究機構

研究代表者

荒船 竜一  国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 主任研究員 (50360483)

研究期間 (年度) 2020-07-30 – 2022-03-31
キーワードレーザー光電子分光 / 超高速現象 / 仕事関数
研究実績の概要

研究の目的:主要な実験設備は、超短パルスレーザーと超高真空電子エネルギー分析システムで、通常 の時間分解光電子分光と同じである。ポンプ・プローブ法を用いポンプ光で励起された表面 電子系の緩和過程を実時間分割追跡する点も通常の時間分解光電子分光と同様である。 このとき時間分解能は励起パルスレーザーのパルス幅である。仕事関数はスペクトルの 低エネルギー側のカットオフから得られる。エネルギー分解能(決定精度)は励起光の スペクトルに依存せず、電子エネルギー分析器の性能で決まる(光電子分光のスペクトル幅 分解能が、励起光のスペクトルと電子エネルギー分析器の装置関数のコンボリューションで 決まることと対照的である)。超短パルスレーザーでポンプ・プローブ法による時間分解 光電子分光測定を行い低エネルギーカットオフを解析することで、高い時間分解能と エネルギー分解能を両立した情報を得る。

研究成果の内容:コマーシャルベースのTi: サファイア・レーザー・オシレータ(パルス幅2ps, 100 fs)を用い、時間分解仕事関数測定を試みた。光電子スペクトルの立ち上がり形状から電子エネルギー分光器のエネルギー分解能 10 meV が達成できていることを確認した。不確定性関係 (ΔE・Δt~760meV・fs) から現状では、不確定性関係を越える分解能を実現できたは言えていない。

意義: この結果は励起光のパルス幅を変えても光電子スペクトルの立ち上がり形状が変わらないことを意味している。10 fs パルスを持つレーザーシステムを用いて測定を行うことで、不確定性原理に左右されず表面励起状態の緩和過程を高い実時間分解能で追跡することが可能となる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初より建設中のパルス幅10フェムト秒となるTi:サファイア・レーザー・オシレータの完成が遅れている。コマーシャルベースでこのパフォーマンスを実現させようとすると1000万円を超えるので、自作しているが超短パルス・レーザーが完成していない段階では不確定性原理関係を越えるような分解能を実現出来るとは言えずインパクトのある結果とは言いがたい。申請者はモード・ロックレーザーの使用については長年の経験があり、詳細な設計図を入手した上ができたので、スクラッチからの構築もできるものと思っていたが、予想以上にレーザー発振、安定なモードロックの実現に時間がかかっている。

今後の研究の推進方策

* ビームプロファイラを導入する。共振器中のビーム形状を定量評価することで、システマチックな向上特性につなげフーリエ限界パルスとなるようにレーザー・システム作り上げる。
* 既存の100 fsパルス幅のレーザーを用いた(予備)実験を通して、(予想していたことではあるが)ポンプ光の強度が強ければ、本手法の適用範囲がより広がることが明らかとなってきた。再生増幅器の導入が本質的であるが必要予算(2000-3000万)を考えると現実的ではない。そこで今回は集光系を改良することで実質的な強度増強を図る。超高真空チャンバーに回折限界まで、10fsオーダーの短パルスレーザーを絞るために、(短パルスのブロード化が懸念される)レンズではなく、シュヴァルツシルド型の反射光学系を用いた超高真空集光系を導入することを考えている。

次年度使用額が生じた理由

予算の有効利用を考える上で、この金額を無理矢理使うことは無理があると考えたため。
消耗品の購入にあてる。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] In Situ Study of Molecular Doping of Chlorine on MoS2 Field Effect Transistor Device in Ultrahigh Vacuum Conditions2020

    • 著者名/発表者名
      Trung Nguyen Tat、Hossain Mohammad Ikram、Alam Md Iftekharul、Ando Atsushi、Kitakami Osamu、Kikuchi Nobuaki、Takaoka Tsuyoshi、Sainoo Yasuyuki、Arafune Ryuichi、Komeda Tadahiro
    • 雑誌名

      ACS Omega

      巻: 5 ページ: 28108~28115

    • DOI

      10.1021/acsomega.0c03741

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Scanning tunneling spectroscopy studies of topological materials2020

    • 著者名/発表者名
      Lin Chun-Liang、Kawakami Naoya、Arafune Ryuichi、Minamitani Emi、Takagi Noriaki
    • 雑誌名

      Journal of Physics: Condensed Matter

      巻: 32 ページ: 243001~243001

    • DOI

      10.1088/1361-648X/ab777d

    • 査読あり
  • [雑誌論文] First-principles calculation of the graphene Dirac band on semi-infinite Ir(111)2020

    • 著者名/発表者名
      Ishida H.、Arafune R.、Takagi N.
    • 雑誌名

      Physical Review B

      巻: 102 ページ: 195425-1/10

    • DOI

      10.1103/PhysRevB.102.195425

    • 査読あり
  • [学会発表] 高分解能二光子光電子分光を用いた表面研究2020

    • 著者名/発表者名
      荒船竜一
    • 学会等名
      日本レーザー学会
    • 招待講演

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公開日: 2021-12-27  

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