研究課題/領域番号 |
20K21187
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
根本 哲宏 千葉大学, 大学院薬学研究院, 教授 (80361450)
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研究分担者 |
中島 誠也 千葉大学, 大学院薬学研究院, 助教 (70802677)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | S0-Tn遷移 / ラジカル反応 / シュードインドキシル |
研究実績の概要 |
我々の研究チームでは従来禁制とされてきたS0-Tn遷移が、光有機化学反応において重要な働きを持つ可能性があることを見出している。すなわち、通常は光を吸収し基底状態から励起1重項状態となり、項間交差を経て励起3重項状態となる一連のプロセスではなく、より長波長の光を吸収して、直接的に励起3重項状態となるプロセスが、特にヨウ素などの重原子を持つ場合に起こりやすいことを見出した。1年度目の研究成果としては、通常のベンゾフェノンなどの重原子を持たない分子においても、同様のS0-Tn遷移は進行し、光触媒としてラジカル反応の促進剤となり得ることを、リン光測定等をもとに実証し、エーテルやアミン類のラジカル的な直接的C-H結合官能基化反応の開発に展開した。 また、可視光とヨウ素含有分子からのS0-Tn遷移を利用したラジカル発生法を有機合成反応開発に応用する取り組みとして、オルトーヨードアニリンとケトン、TMSCNから得られるストレッカー反応生成物に対して可視光を照射することで、ラジカルを発生、ニトリルへのラジカル付加、加水分解を経るシュードインドキシル合成法を開発した。初年度は、本反応の基質一般性検討や、蛍光分子の開発などを検討した。シュードインドキシル骨格を基盤とする蛍光分子の開発には、計算化学的な分子設計を活用することで、生命科学研究にも応用可能な長波長領域の蛍光を発光する分子をデザインし、実際に当該分子を合成した。その光分子特性は、分光学的な機器分析を行い機能の検証も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究は、以下の点で概ね順調に進んでいると考える。 S0-Tn遷移の現象が、ヨウ素などの重原子を持つ化合物だけでなく、ベンゾフェノンのような分子においても進行しており、それらが有機合成反応開発に展開できることを見出した点 ヨウ素原子を含有する分子のS0-Tn遷移によるラジカル発生を利用することで、天然物等にも多く見られる骨格となるシュードインドキシルの合成にも適用した点。
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今後の研究の推進方策 |
ヨウ素以外の重原子を持つ分子のS0-Tn遷移の現象を、触媒開発等の有機合成に応用することは、初年度の検討の範囲では難しい印象を受けた。そこで、2年度目は、本現象が有機合成化学的に利用価値のあるものであることを実証するために、オルトーヨードアニリンとケトン、TMSCNから得られるストレッカー反応生成物に対して可視光を照射することでラジカルを発生させ、ニトリルへのラジカル付加、加水分解を経るシュードインドキシル合成法について集中的に検討し、蛍光素子の開発も含めた一連の研究成果として発表する。
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