研究課題/領域番号 |
20K21188
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
布施 新一郎 名古屋大学, 創薬科学研究科, 教授 (00505844)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | ペプチド / 環状ペプチド / ラクタム / トリホスゲン / マイクロフロー |
研究実績の概要 |
本申請研究「環状ペプチドの新しい合成概念の創造」はペプチドの環化における新合成概念創造を目的とした。環状ペプチドは代謝安定性や膜透過性、標的分子への親和性を向上させると期待されており、医薬品として重要性を増している。通常C末端とN末端双方遊離の鎖状ペプチドの環化により合成されるが、従来法は穏やかな反応性の高価な縮合剤によりC末端のみを選択的に活性化する概念を基盤とする。これは高い反応性をもつ縮合剤を用いると、N末端側も反応し、続く環化が進行しなくなるためである。本申請では、従来法と逆の概念を提案した。すなわち、高活性で安価なトリホスゲンを用いてCとN両末端を反応させて環状中間体を生成させ、その環縮小反応で環状ペプチドを得る手法である。R2年度は、まず合成難度の低い、比較的単純な構造のラクタムの合成を検討した。その結果、トリホスゲンとN-メチルモルホリンを組み合わせる手法、およびトリホスゲンとN-メチルイミダゾールを組み合わせる手法の2つを確立し、これを基質の構造に応じて使い分け、なおかつマイクロフロー合成法を駆使して副反応を抑止しつつ高収率で環化を進行させることに成功した。続いて、環状ペプチドの合成を検討したところ、トリホスゲンとN-メチルイミダゾールを組み合わせる手法を用いることで、良好な収率で目的物を得ることに成功した。安価で廃棄物を除きやすいトリホスゲンを用いるため、汎用されているPyBOP、PyAOP、DEPBT等の縮合剤を用いる手法と比して低コストである。また、高い求電子性をもつ反応剤の利用はこれまで環状ペプチドの合成には適さないとされてきた。本結果によりラクタムや環状ペプチドの合成における新たなアプローチを提供できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は二年間の検討により、環状ペプチドを合成できるマイクロフロー合成法を確立する予定であったが、予想以上に研究が速やかに進捗し、R2年度中に目的の合成手法を確立でき、なおかつ査読付き論文を発表できた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予想よりも早く手法論を確立することに成功したが、一方で、反応機構には未解明の部分が残っており、本当に当初予測した通りの機構で反応が進行しているかについては証明できていない状況である。そこで、環化反応における中間体の解析を試みるとともに、モデル基質を用いた検討を実施し、反応機構の解明につなげる。また、それらの検討を通して得られた知見をもとにして、さらに高収率で環状ペプチドを合成できる手法の確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
特に2020年度はCOVID-19感染拡大の影響で、試薬や溶媒、ガラス器具などの購入が年度初め困難であった時期があり、これによる研究の遅滞を回避するため、当初予定を若干変更し、予め研究室で所持していた化合物を用いた検討や開発を進めた。これにより大幅に当初予想よりも研究遂行に必要な金額が減少した。また、CIVID-19感染拡大の影響でそもそも研究を推進できなかった時期もあり、これがさらなる使用金額の減少につながった。 2021年度はこれまでに解明できていない反応機構を明らかにするための検討、さらには、より高収率で目的物を得るための検討を実施するため、これらの検討に要する試薬や溶媒、ガラス器具、フロー合成用器具の購入に助成金を使用する。
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