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2020 年度 実施状況報告書

反芳香族分子の高分子化による安定化とその機能開発

研究課題

研究課題/領域番号 20K21190
研究機関名古屋大学

研究代表者

忍久保 洋  名古屋大学, 工学研究科, 教授 (50281100)

研究期間 (年度) 2020-07-30 – 2022-03-31
キーワードノルコロール / 反芳香族性 / 重合 / 有機半導体 / 超分子 / 水素結合 / 電荷輸送特性 / 超分子重合
研究実績の概要

反芳香族ノルコロールをユニットとし、側鎖に水素結合部位を導入することによって超分子ポリマーを構築し、積層したノルコロールが示す物性を探求することを目指した。側鎖の構造を精密に制御することにより、ノルコロールどうしの積層角度や距離を制御できれば電荷輸送特性の精密な制御も可能になると考えた。これまで、ポルフィリンなどの芳香族化合物をユニットとするを超分子ポリマー形成は数多く研究されてきたが反芳香族分子の超分子ポリマーは報告例がない。そこで、水素結合部位としてアミド基を有するノルコロールを設計・合成した。得られたノルコロールを高温で溶液中に溶解させ、温度を徐々に低下させることによって集合体が形成した。この際、形成した集合体を電子顕微鏡により観察したところ、ノルコロールが一次元に集積したと思われる繊維状の集合体が観測された。この溶液を再加熱したところ、溶液の色が変化し、電子構造の変化が観測された。この溶液の電子顕微鏡による観察からも繊維状の構造体が観測された。各繊維構造体A、BについてTRMC法による電荷輸送特性調査を行なった。結果として、再加熱により得られた集積体Bが集積体Aに比べて明確な電荷輸送特性を示すことがわかった。従って、再加熱時に別の構造体へと転位し、ノルコロールの積層様式に変化が起きたものと考えられる。
また、積層構造の形成に有利と期待される立体障害の小さな置換基であるメチル基ををもつノルコロールニッケル錯体の合成に初めて成功した。メチルノルコロールニッケル錯体は明確な反芳香族性を示すにもかかわらず、空気中でも取り扱えるなど十分安定性をもつことを明らかにすることができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

積層構造を形成するのに有利と期待される立体障害の小さな反芳香族性ノルコロールの合成に成功したほか、高分子を導入するためのノルコロール前駆体の合成にも成功した。ノルコロールの超分子重合についても成功し、反芳香族超分子ポリマーを得ることができた。

今後の研究の推進方策

昨年度に合成に成功した反芳香族ノルコロールをユニットとする超分子ポリマーについては、X線構造解析や理論計算を駆使して、集合体構造と温度変化によって起こる相転移を解明することを目指す。対応する芳香族ポルフィリンをユニットとする超分子ポリマーとの構造および物性の比較を通して、反芳香族超分子ポリマーの特異的な性質を明らかにしたい。
反芳香族性ノルコロールの側鎖として高分子を導入し、その構造および物性ついて調査する。とくに、濃厚溶液中において形成される集合体の構造とその物性を詳しく調べ、反芳香族分子どうしの相互作用によって形成される積層状態から発現する機能性を追求する。

次年度使用額が生じた理由

未使用額は、新型コロナ感染症の蔓延の影響により研究打ち合わせや学会での発表などの機会が減ってしまい、旅費の使用が低調であったことによるものである。未使用額については、今年度の研究を推進するための物質合成に必須となる合成用試薬費用として使用する予定である。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] Yonsei University(韓国)

    • 国名
      韓国
    • 外国機関名
      Yonsei University
  • [雑誌論文] Redox-induced reversible [2 + 2] cycloaddition of an etheno-fused diporphyrin2021

    • 著者名/発表者名
      Miyagawa Kazuya、Hisaki Ichiro、Fukui Norihito、Shinokubo Hiroshi
    • 雑誌名

      Chemical Science

      巻: 12 ページ: 5224~5229

    • DOI

      10.1039/D1SC00438G

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Synthesis and electron-transport properties of a stable antiaromatic NiII norcorrole with the smallest meso-substituent2020

    • 著者名/発表者名
      Ukai Shusaku、Koo Yun Hee、Fukui Norihito、Seki Shu、Shinokubo Hiroshi
    • 雑誌名

      Dalton Transactions

      巻: 49 ページ: 14383~14387

    • DOI

      10.1039/D0DT03143G

    • 査読あり
  • [学会発表] 超分子的アプローチによる反芳香族ノルコロールの一次元積層体形2021

    • 著者名/発表者名
      Shusaku Ukai, Aiko Takamatsu, Soichiro Ogi, Norihito Fukui, Shu Seki, Shigehiro Yamaguchi, Hiroshi Shinokubo
    • 学会等名
      日本化学会第101春季年会
  • [学会発表] Synthesis of Covalently Linked Norcorrole Dimers and Their Association Behavior2021

    • 著者名/発表者名
      Si-Yu Liu, Shusaku Ukai, Norihito Fukui, Hiroshi Shinokubo
    • 学会等名
      日本化学会第101春季年会
  • [学会発表] Supramolecular assembly of antiaromatic norcorrole2021

    • 著者名/発表者名
      Shusaku Ukai, Aiko Takamatsu, Soichiro Ogi, Norihito Fukui, Shu Seki, Shigehiro Yamaguchi, Hiroshi Shinokubo
    • 学会等名
      GTR年次報告会
  • [学会発表] A 2-to-2' 18-to-18' Doubly Linked Ni(II) Norcorrole Dimer: An Effectively Conjugated Antiaromatic Dyad2020

    • 著者名/発表者名
      Si-Yu Liu, Hiroyuki Kawashima, Norihito Fukui, Hiroshi Shinokubo
    • 学会等名
      第10回CSJ化学フェスタ2020
  • [学会発表] ジアザ-s-インダセンの合成と物性2020

    • 著者名/発表者名
      Kensuke Hanida, Norihito Fukui, Hiroshi Shinokubo
    • 学会等名
      若手オンラインシンポジウム
  • [備考] 忍久保研究室

    • URL

      http://www.chembio.nagoya-u.ac.jp/labhp/organic1/index.html

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公開日: 2021-12-27  

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