研究課題/領域番号 |
20K21198
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
新藤 充 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (40226345)
|
研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
|
キーワード | トリプチセン / イノラート / イミン / 酸化 |
研究実績の概要 |
これまでイプチセンの中で基本となるトリプチセンの1段階合成法を見出している(Angew. Chem. Int. Ed. 2017)。この合成法の特徴はトリプチセンの片面に選択的に官能基を導入することができる唯一の方法である点である(Chem.Eur.J, 2019)。このトリプチセンを「カゴの格子」に相当する3本のリンカー(炭素鎖、環など)を用いて共有結合で連結することで安定かつ半剛直なカゴ状分子を合成することを目的とした。先に合成したトリシリルトリプチセンを臭素化剤で処理すると高収率でトリブロモトリプチセンを合成することができた。シリルトリプチセンの環歪みが駆動力となったと考えられる。これに対して、鈴木カップリングでアミノ基を持つフェニルホウ酸とカップリングしカゴ分子の底と支柱の一部に相当する部分を合成した。一方、トリプロモトリプチセンをカップリングでトリビニル化し、酸化的開裂を行うことでトリホルミルトリプチセンを合成した。両者を脱水反応に付したところ、二つのイミノ結合と一つのN,O-アセタール結合で連結されたカゴ分子を高収率で合成することに成功した。予想外に高収率であったが、イミンの形成反応は可逆であるために分子間反応が生じても分子内反応で3か所の連結ができると不可逆となるため、平衡ががカゴ分子にシフトしたと考えられる。この分子は安定でありX線結晶構造解析により構造を確認した。また、ヒドリド還元でアミンに容易に還元された。このアミンはDMSO中で加熱することでイミンに再酸化される新規酸化反応を見出した。また、フロー反応によるトリプチセンの合成にも初めて成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りカゴ分子を合成することができた。コロナ禍により実験に遅れが生じて、一般性を検証するには至らなかった。しかし一方で、別途進めていた大環状環化による開口型かご分子は一部成功しており、新たなカゴ分子合成の端緒をつかむことができた。ただし、詳細な構造解析に至っていない。この点は予想以上の進展であった。総じて、おおむね順調に進展したと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
イミン連結型かご分子が予想以上に安定かつ高収率で得られることが判明したので、今後この一般性の検証と、他の可逆的結合形成反応を試験する。また、支柱末端の大環状環化にも見通しができたので詳細な構造解析を含めて、開口型かご分子の合成とその特性について研究を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により実験に遅延が生じ、さらに学会発表、研究打合せがすべてオンラインとなり旅費は未使用となった。次年度は研究者(学生及び研究員)を増員し研究の加速を図る。
|