研究実績の概要 |
本研究では情報科学と機械学習を基盤としたキラルEu(III)錯体の配位空間研究を検討した。具体的には、機械学習を行うために必要な基礎データとして、数種類のキラルEu(III)錯体[Eu(+hfc)4]-M+ (M = Na, K, Rb, Cs, NEt4+,NEt3Me+, hfc: へプラフルオロブチリルカンファー)の合成および光物性評価を行った。 [Eu(+hfc)4]- Cs+の三分子に関しては四つの+hfc配位子のフルオロアルキル基が全て対カチオンを取り囲む向きに配置しており、複数のCH-F相互作用およびCs-F間の結合があることが分かった。一方で、[La(+hfc)4]- Na+は三つの+hfc配位子がNaイオンを取り囲む向きに配位しているのに対して、残り一つのhfc配位子はフルオロアルキル基がLa-Naの結合に対して垂直な方向に延びていた。このことより、[La(+hfc)4]- Na+は他の三つの錯体と比較して配位幾何学構造が大きく異なることが分かった。 [Eu(+hfc)4]- Cs+のgCPLは本測定と既報でほぼ等しい値が得られた。 [Eu(+hfc)4]-NEt4+および[Eu(+hfc)4]- NEt3Me+では1.4を超える大きいgCPLが観測され、対カチオンの構造を最適化することでさらなるgCPL増大の可能性が示唆された。一方、MeOH溶液中での[Eu(+hfc)4]- NEt4+のgCPLは-0.08であった。Square antiprism構造を取らない[Eu(+hfc)4]- Na+もgCPLが+0.15と低いことから、Eu(+hfc)4錯体ではSquare antiprism構造によって+hfc配位子のフルオロアルキル基がEu(III)イオンに対し一方向に局在する配位環境がCPL強度を増大させると考えられる。
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