研究課題/領域番号 |
20K21203
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西林 仁昭 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (40282579)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | アンモニア / 含窒素有機化合物 / 触媒反応 / ニトリド錯体 / モリブデン |
研究実績の概要 |
研究目的を達成するために、ごく最近に開発に成功した触媒的アンモニア合成反応で得た知見を踏まえる。触媒的アンモニア合成反応を達成した鍵は、その特異な新しい反応機構である。本触媒サイクルでは、窒素分子架橋二核モリブデン錯体上での架橋窒素分子の切断反応を経て、対応するニトリド錯体が生成する。ニトリド錯体に対して二ヨウ化サマリウムと水とから系中で生成した錯体からプロトン共役電子移動(Proton-Coupled-Electron-Transfer: PCET)反応によりニトリド錯体上の窒素上で3つの窒素-水素結合が生成したアンモニア錯体が生成する。最終的に窒素ガスとの配位子交換反応によりアンモニアが解離する。この窒素架橋分子の切断反応を経由して生成するニトリド錯体とそれに対するPCET反応によるアンモニア錯体の生成が鍵となっている。この新しいサイクルで、鍵中間体であるニトリド錯体上のニトリド配位子上で窒素-炭素結合生成を連続的に行うことができれば、すなわち、炭素求電子共役電子移動(Carbon-Coupled-Electron-Transfer: CCET:本申請者の造語)に該当する反応を進行させることができれば、最終的には含窒素有機化合物の合成が達成可能となる。つまり、触媒的アンモニア合成反応で利用したプロトン源の代わりに炭素原子求電子等価体を用いて反応を行うことで触媒的な含窒素有機化合物の合成を目指す。今年度は、モリブデンニトリド錯体に対して、様々な炭素求電子剤との反応を検討した。幾つかの炭素求電子剤との反応ではニトリド配位子に対して反応が進行して、対応するイミド錯体の生成が確認できた。生成したイミド錯体の詳細な構造については単結晶X線結晶構造解析を行うことで、その詳細について確認を行うことが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初からの予定通りに、幾つかの炭素求電子剤を用いてニトリド錯体に対して反応を行うことで、対応するイミド錯体の単離と同定を行うことに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は単離および同定に成功したイミド錯体を二ヨウ化サマリウムに代表される様々な還元剤と反応させることで、モリブデン金属上からの解離を試みる。当初は、段階的な化学量論反応による含窒素有機化合物の合成を目指すが、最終目標は窒素ガスからの触媒的含窒素有機化合物の合成法の開発である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は当初の研究計画では予見できなかったコロナ禍により、研究課題の実施について大きな遅延が生じた。研究課題の実施に必要な触媒反応や化学量論反応等の実施が当初の予定よりも大幅に遅れた。これら一連の研究進捗を踏まえて、当初の研究計画を大きく修正する必要がある。この目的の為に、当初の計画にあった実験装置の購入と、その研究の実施に必要な研究員を雇用する。
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