研究課題/領域番号 |
20K21205
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
村橋 哲郎 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (40314380)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | パラジウム錯体 / ラジカル |
研究実績の概要 |
「パラジウムラジカル種」は、従来合成されてきた安定酸化状態の0価、+II価の中間酸化状態にある奇数電子種である。10族遷移金属のうち、3d金属であるニッケルが安定なNi(+I)単核ラジカル種を容易に与え、その化学が古くから研究されてきた事とは対照的に、4d金属であるパラジウムの単核Pd(+I)種については、その合成・単離は極めて困難とされてきた。本研究では、単核Pd(+I)ラジカル種を安定に生成するための新たな配位子設計指針を見出して単核Pd(+I)ラジカル錯体の合成・単離方法を開発し、Pd(+I)ラジカル種の幾何構造を解明することを目指して研究を進めている。さらに、単離・合成した単核Pd(+I)ラジカル錯体の反応性を明らかにして、Pdラジカル触媒を合理的に構築するための錯体基盤を開発することも目指している。 初年度は、種々の二座キレートホスフィン配位子を用いてPd(+I)ラジカル種を安定化する試みをおこなった。種々の二座ホスフィン配位子を有するPd(+II)とPd(0)錯体を用いた均化反応を系統的に調査した結果、典型的な大バイトアングル型配位子であるXantphosおよびDPEphosを用いた場合に、安定な4配位Pd(+I)種を与えることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
パラジウムラジカル種の開拓において解決すべき最も重要な課題のひとつであるPd(+I)単核種の合成戦略に関する有用な知見を得たことから、順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
キレート配位子の効果を解明するために、Xantphos、DPEphosよりもバイトアングルの小さなdppfやBINAPなどのビスホスフィン配位子、さらには種々の単座ホスフィン配位子を用いてPd(+II)とPd(0)による均化反応を行い、Pd(+I)種の生成挙動を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は、新型コロナウィルス感染拡大の影響により、特に前期において大学への出校が制限されたことから、物品費において次年度使用額が生じた。また、参加予定の学会が、新型コロナウィルス感染拡大の影響により中止になったことから、旅費においても次年度使用額が生じた。2020年度に生じた次年度使用額は、2021年度分として請求した助成金と合わせて、主として物品費に充当して使用する計画である。
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