研究課題
かさ高いDmp基 (2,6-(mesityl)2C6H3)を持つ一級ホスフィンPH2Dmpを合成し、Feクラスター合成反応に用いた。その結果、P-H結合とP-C結合の切断を伴いつつFe原子の集積化が起こり、かつmesityl基が一部のFe原子を安定化した新規[Fe10]クラスター錯体が、低収率ながら生成した。従来合成されてきたFeクラスター錯体よりも大きく、また平均酸化数がFe(I)とFe(II)の間にあると予想される還元状態のクラスター錯体であることから、還元反応の触媒に利用可能と期待される。さらに、本研究で合成する鉄族金属クラスター錯体の主な利用法と考えられる窒素分子のシリル化反応について、詳細を掘り下げた。このシリル化反応は窒素気流下で実施し、ともに過剰量の金属NaとMe3SiClを錯体触媒に対して加える。しかし金属-H結合を持つ錯体は、しばしばR3SiClの塩素とH/Cl原子の交換反応を引き起こすことが知られている。そこで、既報のFe4ヒドリドクラスター錯体と過剰量のMe3SiClの反応をC6D6中で追跡し、室温で100時間以上反応しないこと、つまりFe-H部位とMe3SiClは容易にはH/Cl原子の交換を起こさないことを確認した。また、他大学の研究チームと連携し、本研究に寄与する以下の課題も推進した。本研究で用いる金属を保護すると期待される新しいリン系配位子を開発すべく、小笠原正道教授(徳島大)との共同研究を推進し、リン含有五員環とシクロペンタジエニル基で鉄を挟んだ錯体(ホスファフェロセン錯体)を2つ連結した新たな錯体の不斉合成研究を進めた。小笠原教授が持つ不斉触媒反応技術を応用して標的化合物を合成し、本研究代表者らが構造決定して成果をまとめ、Org. Lett.誌に発表した。
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