研究課題/領域番号 |
20K21212
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小野 利和 九州大学, 工学研究院, 准教授 (20643513)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | 円偏光発光 / らせん錯体 / 蛍光 / ねじれ角 / 計算化学 / 典型元素錯体 / 13属元素 / アルミニウム |
研究実績の概要 |
イミノピロール配位子と典型元素から構成される安定ならせん錯体の創製を通じて、溶液および固体中で円偏光発光を示す材料の創製を目的とした。今年度は、イミノピロール配位子とアルミニウムイオンから構成される2核3重らせん錯体の合成を行い、その置換基の違いにより水色、黄色、橙色発光を示す材料の創製を達成した。単結晶X線構造解析の結果、いずれのらせん錯体においても結晶構造中において、右巻きと左巻きの構造が観測された。そこでリサイクル分取クロマトグラフィーとキラルカラムを組み合わせた装置を用いて、それぞれのらせん錯体の光学分割を行うことにより、右巻きらせんと左巻きらせんの分割に成功した。円二色性スペクトル測定により、光学分割したサンプルは、鏡像関係のコットン効果を示すことが明らかとなった。右巻きと左巻きの構造については、TD-DFT計算によって得られたシミュレーション結果と照らし合わせることで同定を行った。また右巻き、左巻きに光学分割した試料は、溶液および固体中(KBrペレット中)において円偏光発光を示すことを見出した。また水色発光と黄色発光を示すらせん錯体を混合することにより、白色の円偏光発光を得ることを見いだした。さらにイミノピロール配位子とアルミニウムイオンと同族であるガリウムイオン、インジウムイオンから構成される2核3重らせん錯体の合成を達成し、同様に光学分割したサンプルが円偏光発光を示すことを見いだした。温度可変NMRや円二色性スペクトルの評価により、これらの錯体は、温度や溶媒変化に対して比較的安定である、静的らせんであることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
イミノピロール配位子とアルミニウム、ガリウム、インジウムから構成される2核3重らせん錯体の合成、光学分割、円偏光発光の評価までを達成し、本成果を2報の学術論文として報告していることより、当初の計画以上に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
得られた2核3重らせん錯体の吸収や発光波長が、らせん構造のねじれ角と相関性がある知見を得ている。これを明らかとするため、イミノピロール配位子の置換基を系統的に変更させた様々な構造のらせん錯体の合成と光学特性評価を進める。また金属イオンの混合や配位子の混合による誘導体合成についても検討する。特に近赤外領域で発光を示す2核3重らせん錯体の合成を目指す。
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