研究課題
アセチルアセトン誘導体を繰り返し単位とする単分散ポリケトン上でのPaal&ーKnorrヘテロ芳香環形成反応を使って、張力に相当する高い歪みエネルギーを有する大環状化合物Calix[3]pyrroleおよびその類縁体合成に成功した。また、歪みエネルギーを駆動力とする新奇反応「歪み誘起環拡大反応」を発見し、ヘテロ芳香環が6つ以上から成る高次Calixpyrrole類の効率的合成法の開拓へと繋げた。研究当初は、ポリケトンの両端を化学修飾して基板上などに固体化することで張力発現の場を作り出す計画であったが、より簡便で汎用性の高い方法として、ポリケトンでマクロサイクルを合成するという手法に行き着いた。この結果として得られたCalix[3]pyrroleは、ポルフィリン化学の中で最も合成が困難とされてきた分子の1つであり、その理由が本研究の狙いであった張力に相当する環内の歪みエネルギーであることも見いだした。さらに歪みエネルギーは、酸性条件下においてマクロサイクルの開裂と再結合環化を伴う定量的な環拡大反応に利用できた。様々なCalix[3]pyrrole誘導体の合成を経て、この歪み誘起環拡大反応の機構を解明したところ、この反応では位置選択的に環の切断反応が起こっていることで、異性体混合物を生み出さずに高次マクロサイクルへと変換できることも分かった。この性質を用いて、さらに検討した結果、Calix[12]pyrrole類縁体という高次マクロサイクルの合成と単離に成功し、単結晶構造解析に成功した例としては世界最大の同類縁体の報告に至った。以上の成果は、ポリケトンが張力を類い稀な化学反応に変換できる優れた分子性材料であることを証明したのみならず、歪みを持ったポルフィリン類縁体の新たな合成経路を提供することで構造有機化学に新たな研究領域をもたらしたと考えている。
すべて 2023 2022 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件) 学会発表 (21件) (うち国際学会 5件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
Journal of Porphyrins and Phthalocyanines
巻: - ページ: -
10.1142/s1088424623500189
Angewandte Chemie International Edition
巻: 62 ページ: -
10.1002/anie.202301460
Precision Chemistry
巻: 1 ページ: 34-39
10.1021/prechem.3c00025
Chemical Science
巻: 13 ページ: 9848-9854
10.1039/d2sc03083g
10.1142/s1088424622500754
Macromolecules
巻: 55 ページ: 10940-10949
10.1021/acs.macromol.2c01683
https://www.eng.hokudai.ac.jp/labo/lor/HP/index.html