研究実績の概要 |
近年、機械的刺激に応答して様々な応答を示す「メカノフォア」と呼ばれる分子骨格が盛んに研究されている。最近我々は、機械的刺激により共有結合を切断することなく発光特性が変化する「ロタキサン型超分子メカノフォア」の開発に成功した。本申請研究では、この超分子メカノフォアの機能拡張の第一歩として、蛍光共鳴エネルギー移動機構を分子設計に組み込むことにより、赤色蛍光を完全On/Offスイッチするロタキサン型超分子メカノフォアを創製することを目指した。 前年度の研究では、緑色蛍光団である9,10-bis(phenylethynyl)anthraceneをドナー、赤色蛍光団であるπ共役を拡張したBODIPY誘導体をアクセプターとして用いたロタキサン型超分子メカノフォアを設計・合成した。この超分子メカノフォアをポリウレタンに導入したところ、機械的刺激に応答して赤色蛍光の強度変化が起きることが分かった。しかし、初期状態での赤色蛍光強度が非常に大きくなることが分かった。 本年度は、①超分子メカノフォアの分子構造改変、及び、②ポリマーをポリウレタンから他のポリマーに変更する、という二つのアプローチから研究を行った。①に関しては、分子骨格を様々に変更してもポリウレタンを導入するポリマーとして用いる限り、初期状態での赤色蛍光は無視できない程度の蛍光強度となった。一方で②に関しては、水溶性のモノマーを用いることで水を吸収してハイドロゲルとなるポリウレタンウレアに導入することができた。得られたハイドロゲルは、数百%まで延伸することができ、緑色蛍光団を選択的に励起する励起光照射下で、赤色蛍光の強度が延伸によって大幅に上昇することが明らかとなった。 以上の結果は、ロタキサン上で機械的刺激によってFRETの制御がなされたことを意味しており、当初の研究目標が達成されたと言える。
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