ベンゼン環が直線状に縮環したアセンは、高いキャリア移動度を有するため、次世代ナノデバイスの基幹材料として注目されている。アセンは環の個数の増加に従いキャリア移動度が大きくなるため、長いアセン(=ポリアセン)の合成手法の開発が強く求められている。多孔性金属錯体(MOF)は、その構成要素を適切に選択することで、細孔構造を原子レベルで緻密に設計できる。そのため、MOFが有するナノ空間を高分子合成の場として用いることで、得られる高分子の構造を精密に制御することが可能である。本研究では、MOFの一次元ナノ細孔を多環芳香族炭化水素の重合場として用いることで、架橋反応を抑制し、ポリアセンを合成した。 高い熱安定性を持つMOFの1次元細孔内でナフタレン誘導体を重合した。モノマーのみを加熱した場合、分子間の架橋反応が進行し、枝分かれ構造を有する生成物が確認された。それに対して、MOFから単離した前駆体のIR・13C-NMR・ MALDI-TOF MS測定から、MOF細孔内では一次元的に重合反応が進行し、長いもので環が71個連結した前駆体高分子が形成されていることが分かった。続いて、MOFと前駆体高分子複合体を加熱処理することで、MOFの細孔内で脱水素芳香化反応を行った。
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