研究実績の概要 |
前年度に発見したビス[2-(ブロモメチル)アクリレート]とジカルボン酸のメカノケミカル重縮合について,モノカルボン酸を用いて反応機構を解析した.安息香酸カリウムとの固相反応は1時間後も20%程の進行に留まる一方で,トリエチルアミンを共存させると90%まで進行した.さらに,ビス[2-(ブロモメチル)アクリレート]とトリエチルアミンの反応が40%程度に留まる一方で,予めトリエチルアミンとの反応で生じるアンモニウム中間体を単離し,モノカルボン酸を反応させたところ,反応度は90%に達した.以上から,トリエチルアミンは反応を加速する触媒で,ビス[2-(ブロモメチル)アクリレート]とトリエチルアミンの反応が律速段階であることが示された.トリエチルアミンは生成ポリマーの主鎖切断を引き起こす触媒でもあるが,以上の結果は,その使用が重合に不可欠であることを示している.次に,種々のモノマーを用いてメカノケミカル重合を検討したところ,溶媒を使用せず,環状オリゴマーを形成しにくい直線的な構造の固体モノマーほど,高重合度ポリマーを与えることがわかった.メカノケミカル重合は,2,6-ナフタレンジカルボン酸のような難溶性のモノマーの重合も可能にした. 一方,アクリル酸とアクリル酸エチルの共重合体を合成し,これをポリカルボン酸と見立てて,ビス[2-(ブロモメチル)アクリレート]との共役置換反応に基づく架橋を行った.得られたゲルは溶媒不溶で加熱溶融もせず,動的粘弾性試験で架橋構造が確認された.一方で,ごく少量の3級アミン触媒を共存させると,動的粘弾性試験で架橋構造が確認される一方で,熱プレスによる成形が可能であった.応力緩和試験の結果,この架橋体が高速で架橋点を組み替えるビトリマーであることが明らかになった.
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