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2020 年度 実施状況報告書

柔軟性と長寿命リン光発光を兼ね備えた革新的高分子・ハイブリッド材料の創製

研究課題

研究課題/領域番号 20K21221
研究機関京都大学

研究代表者

生越 友樹  京都大学, 工学研究科, 教授 (00447682)

研究期間 (年度) 2020-07-30 – 2022-03-31
キーワードポリスチレンスルホン酸 / 長寿命リン光 / ブロックポリマー / 相分離 / 水素結合
研究実績の概要

研究代表者は、市販されている高分子、ポリスチレンスルホン酸(PSS)が室温大気下で1秒を超える長寿命リン光を示すことを偶然見出した。(T. Ogoshi et al. Adv. Funct. Mater. 2018, 28, 1707369)。ポイントは、加熱真空によりPSSから水分を除去することである。水分を除去することで、高度に水素結合ネットワークが発達し、高分子鎖の運動性が大幅に減少するとともに、ベンゼン環でのスタッキングが促進され、リン光発光のパスができることが明らかとなった。そこで本研究では、「PSSの長寿命リン光」+「柔軟性・成膜性など高分子としての特徴」を併せ持つ共重合体・ハイブリッド材料の創製を目的とする。本年度は、フレキシブル/剛直な室温リン光発光を示す共重合体の合成を行った。その結果、PSSを有するブロックポリマーを用いると、従来のPSS由来の長寿命リン光を示すことを見出した。一方で、PSSと他ポリマーとのブレンド体では、リン光を示しづらくなることが分かった。ブロックポリマーについてXRD測定を行うと、PSSはアモルファスなポリマーであるが、ブロックポリマー化した他ポリマーが結晶性である場合は、他ポリマーの結晶性に由来するピークが確認された。一方でブレンド体の場合はPXRDでピークは確認されなかった。これよりリン光発光には、ブロックポリマー化によるPSSと他ポリマーとの相分離構造の形成が重要であることが分かる。他ポリマーと完全に相溶してしまうと、リン光発光に重要なPSS間の水素結合が切断させてしまうためだといえる。またPSS単体、PSSのブレンド体と比べて、ブロックポリマーとして柔軟なポリマーを用いた場合は、そのポリマーに由来する柔軟性を有したフィルムが得られた。PSSでは剛直であることから、ブロックポリマー化により、柔軟でありながらも長寿命リン光を示す材料を創成することができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

PSS単体、PSSのブレンド体と比べて、ブロックポリマーを合成する際に柔軟なポリマーを用いた場合は、そのポリマーに由来する柔軟性を有していた。PSSは剛直であることから、ブロックポリマー化により、柔軟でありながらも長寿命リン光を示す材料を創成することができた。これまでにフィルム化できる長寿命リン光材料はほとんどない。さらに柔軟性を有するような長寿命リン光フィルムはこれまでに皆無であり、大きなパラダイムシフトをもたらす成果であるといえる。以上のことから、当初の計画以上に進展しているといえる。

今後の研究の推進方策

フレキシブル/剛直な室温リン光発光を示すブロックポリマーの合成
ポリスチレンスルホン酸(PSS)を基にしたリン光発光には、PSS間の高度に発達した水素結合ネットワークの形成が重要である。そのため、PSSとの水素結合を形成するような水酸基を有したポリマーとのブレンドフィルムを形成する。PSSとの水素接合形成により、リン光がどのように変化するかを調査する。また昨年度の結果から、相分離構造が重要であることが明らかとなった。これより、Layer-by-Layer法によって、PSSとカチオン性ポリマーが相分離した複合フィルムを作成することで、リン光発光を示すような薄膜の形成を試みる。

異種材料との接着、剛直性を調整可能な室温リン光ハイブリッド材料
PSSのスルホン酸基は、ガラス成分のシラノール基との間で水素結合が可能と予想される。そこで、ガラス形成を溶液から行うことができるゾル―ゲル反応中にPSSを共存させ、PSS/ガラスハイブリッドフィルムを作成する。ガラス成分との複合化により、ガラス基板など異種材料へのPSSの接着が可能となる。一方で、シリカガラス成分が多くなるとリン光発光に必要な水素結合ネットワークが切断されてしまうと予測される。PSSとガラス成分との割合を調整し、接着性、剛直性、長寿命リン光を併せ持ったハイブリッドフィルムを作成する。

次年度使用額が生じた理由

次年度に本研究で必要となる高速液体クロマトグラフHPLCシステムを導入するために、次年度使用額が生じた。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Thermally Responsive Poly(ethylene oxide)‐Based Polyrotaxanes Bearing Hydrogen‐Bonding Pillar[5]arene Rings**2021

    • 著者名/発表者名
      Kato Kenichi、Onishi Katsuto、Maeda Koki、Yagyu Masafumi、Fa Shixin、Ichikawa Takahiro、Mizuno Motohiro、Kakuta Takahiro、Yamagishi Tada‐aki、Ogoshi Tomoki
    • 雑誌名

      Chemistry - European Journal

      巻: 27 ページ: 6435~6439

    • DOI

      10.1002/chem.202005099

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Vapoluminescence Behavior Triggered by Crystal-State Complexation between Host Crystals and Guest Vapors Exhibiting No Visible Fluorescence2020

    • 著者名/発表者名
      Ogoshi Tomoki、Hamada Yukie、Sueto Ryuta、Kojima Ryosuke、Sakakibara Fumiyasu、Nagata Yuuya、Sakata Yoko、Akine Shigehisa、Ono Toshikazu、Kakuta Takahiro、Yamagishi Tada-aki
    • 雑誌名

      Crystal Growth & Design

      巻: 20 ページ: 7087~7092

    • DOI

      10.1021/acs.cgd.0c00982

    • 査読あり
  • [学会発表] Pillar-Shaped Macrocyclic Compounds “Pillar[n]arenes”: from Simple Molecular Receptors to Bulk Supramolecular Assemblies2021

    • 著者名/発表者名
      Tomoki Ogoshi
    • 学会等名
      SCEJ 86th Annual Meeting, International Symposium
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 柱型環状ホスト分子「ピラー[n]アレーン」の化学2021

    • 著者名/発表者名
      生越 友樹
    • 学会等名
      第14回ケムステVシンポジウム「スーパー超分子ワールド」(オンライン)
    • 招待講演
  • [学会発表] 柱型環状分子ピラー[n]アレーンを基にしたポリロタ キサンの合成2020

    • 著者名/発表者名
      生越 友樹、大西 克知、前田 航輝、柳 生 雅文、角田 貴洋、Fa Shixin、山岸 忠明
    • 学会等名
      第69回高分子討論会
  • [備考] 長寿命リン光発光高分子材料

    • URL

      http://www.sbchem.kyoto-u.ac.jp/ogoshi-lab/research5.html

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公開日: 2021-12-27  

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