研究課題/領域番号 |
20K21224
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
家 裕隆 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (80362622)
|
研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
|
キーワード | キノイド / 有機半導体 / 電子輸送型材料 / 熱電変換 / 光ダイオード |
研究実績の概要 |
キノイド構造のオリゴチオフェンは低い最低空軌道レベルを持つことから、キャリアが電子のn型半導体への応用が期待されている。一般に、キノイド構造のオリゴチオフェンはチオフェン環が芳香族化することに起因してビラジカル構造との共鳴となることが知られている。鎖長伸長に伴ってビラジカル構造の寄与が高くなると化学的安定性が低下するため、n型半導体としての応用が困難となる。そこで本研究ではベンゼン縮環導入で安定性を向上し、かつ、ビラカル性を調節したキノイド構造オリゴチオフェンの系統的な開発を目的として、完全ベンゼン縮環のキノイド構造オリゴチオフェン5量体(1)の合成を行った。また、ベンゼン縮環の数と位置がビラジカル性に及ぼす影響を明らかとするため、ベンゼン縮環を3つ導入した2種類のキノイド構造オリゴチオフェン5量体(2,3)の合成も行った。1は理論計算からビラジカル性が0と見積もられたのに対して、2,3はベンゼン縮環の位置によってビラジカル性の有無が明確に異なることが示唆された。熱変換反応を鍵とする合成ルートで新規分子1-3の合成を達成した。電子吸収スペクトル測定において、1は3つの分子の中で最も短波長側に吸収極大が観測された。これはビラジカル性がないことに起因して広いエネルギーギャップを持つことを示唆している。有機電界効果トランジスタ測定において、キノイド分子1-3はビラジカル性を反映した特性が観測された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的とするキノイド分子の合成を達成し、その物性評価と機能評価まで行うことができたため
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度に開発した分子は近赤外領域に光吸収特性をもつことから、2022年度は光ダイオードへの機能開拓を展開する。また、さらに鎖長を伸ばしたキノイド構造分子、ビラジカル性を精密に調整したキノイド構造分子の開発も2022年度に行う計画である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は新型コロナウイルスの影響で、研究実施期間が制限されたため、旅費、消耗品等の支出が想定より減る結果となった。この繰越を活用するため、2022年度は有機合成や物性評価に加えて、機能評価に重点を置いた研究を実施する計画である。
|