研究実績の概要 |
本研究では,適度な網目径と網目数を持ち溶媒(水)に可溶な三次元網目構造体=分子ネット(MN)をポリエチレングリコール(PEG)から作成し,このMN溶液中で水溶性モノマーを重合(縫込み重合)することにより,トポロジカルな構造をもつ新規ゲル(MN-gel)を合成し,得られたMN-gelの物性を明らかにすることを目的としている。本年度は,昨年度までに確立した手法に基づき,MNおよびMN-gelを作成し,その物性を評価した。 モノマーとしてアクリル酸(AAc)を選択し, 水中 MN共存下でラジカル重合を行った。その結果,一定以上のMNおよびモノマー濃度においてMN-gelが得られた。このMN-gelをダンベル型に成形し,引っ張り試験を行なったところ,通常の化学架橋ゲルと比較して著しく大きな破断伸び(1500%)を示した。この破断伸びには,塑性変形と弾性変形の両方を含んでいた。また,水に浸漬後には,非常に高い膨潤性を示し,長時間(14日)経過後には溶解した。MN-gelではMNとPAAc鎖との絡み合いが架橋点となり,PAAc鎖の伸びにおいて,PAAc鎖もMNも破断せず,また架橋点が滑ることにより,このような物性を発現したと考えられる。 また,別のモノマーとして,N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAAm)を用いて,MN-gelの作成を行なったところ,同様にMN-gelが得られた。このポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)PNIPAAmを用いたMN-gelは,通常のPNIPAAMよりもLCSTが低くなる傾向を示した。また,PAAcからなるMN-gelと同様に著しく大きな破断伸び(1000%)を示したが,繰り返し試験によるヒステリシスは極めて小さく,PAAcの場合よりもの大きな弾性変形領域を示し,よく伸びるだけではなく,元の大きさ近くまで回復するという高い伸縮性を示すことが分かった。
|