研究課題/領域番号 |
20K21230
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
幅崎 浩樹 北海道大学, 工学研究院, 教授 (50208568)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | 電極 / マグネシウム / 集電体 / 腐食防食 |
研究実績の概要 |
2050年のカーボンニュートラルの目標に向けて,電力を貯蔵できる二次電池の役割は重要であり,現状のリチウムイオン二次電池の高エネルギー化への期待は大きい。リチウムイオン二次電池の高エネルギー化に向けて,正極の電位をさらに貴にシフトすることが望まれているが,その場合,正極集電体として用いられているアルミニウムが不働態を維持できないことが問題となる。リチウムイオン二次電池のアルミニウム集電体の不働態化はアルミニウムフッ化物の生成に起因すると言われているが,より化学的に安定なフッ化物としてマグネシウムフッ化物がある。本研究では,マグネシウムがフッ化物含有有機電解液中で緻密で均一なフッ化物皮膜を100 Vを超える電位まで形成できるという代表者らの最近の研究成果を基盤として,リチウムイオン二次電池電解液中において,5 Vを超える電位まで安定な正極集電体をマグネシウム基材料にて開発することを目的としている。本年度は以下の成果を得ている。 (1)まず,フッ化アンモニウムを含む有機電解液中において,1~10 V程度の低い電位領域においても数十 V以上の高電位と同じようにマグネシウムは不働態を維持しており,高い安定性を維持できることを確認した。 (2)グローブボックス内にて2電極および3電極にて正極集電体の電気化学評価を行えるシステムを構築し,10 V程度までの電位領域における不動態化挙動を検討した。 (3)アルミニウム集電体において問題となる電解質としてリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを含む溶液中において,マグネシウムは10 Vまで不働態となり,アルミニウムよりも優れた特性を示すことがわかった。 (4)不純物相を含むバルクマグネシウムとスパッタ法で作製したマグネシウム薄膜との比較検討も行い,不純物相の影響があることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リチウムイオン二次電池の電解液中におけるマグネシウムの集電体としての安定性について,電気化学評価から,その高電位域における不働態化を明らかにすることができ,集電体としての可能性が見えてきている。今後更なる集電体としての特性評価が可能な状況であり,概ね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下の項目について検討を行う予定である。 (1)各種電解液中における電気化学的挙動のより詳細な検討を行う,(2)マグネシウム中の不純物層の溶解予行を把握する,(3)不働態皮膜の構造と組成,および電位による膜厚変化を明らかにする,(4)不働態皮膜の成長挙動をマーカー試験を導入して明らかにする,(5)電極活物質を導入し,電極/集電体が機能することを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症の感染予防の影響もあり,出張や消耗品の支出が減少した。次年度も出張は多くは見込めないが,実験推進に必要となる備品や電解液などの消耗品を購入し,研究の加速に有効に活用する予定である。
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