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2020 年度 実施状況報告書

金属酸化物と固体窒素源を用いた金属窒化物単結晶および粉末の低温合成法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 20K21231
研究機関東北大学

研究代表者

山田 高広  東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (10358260)

研究期間 (年度) 2020-07-30 – 2022-03-31
キーワード金属窒化物 / 単結晶 / 低温合成 / 固体窒素源
研究実績の概要

研究代表者らがこれまでに見出したチタン酸化物を窒化ホウ素(BN)製のルツボ内で金属ナトリウム(Na)とともに加熱することで,100μmオーダーの窒化チタン(TiN) の単結晶粒が生成する反応を,従来の金属窒化物の単結晶や粉末の合成法を大きく変える潜在性を有した現象と捉え,固体窒素源を用いた低温での各種金属窒化物の単結晶育成と粉末合成を試みた.具体的には,同手法でのTiNの合成反応において,Ti酸化物原料や加熱条件による結晶のサイズや結晶性,生成物を調べ,本合成法における反応機構と結晶の生成・成長メカニズムを調べた.その結果,大きな生成自由エネルギーを有する副生成物のナトリウムホウ酸塩が本反応の駆動力となること,ナトリウムホウ酸塩と中間生成物であるナトリウムチタン酸塩の融点が窒化物単結晶の生成温度よりも低いことから,両化合物の液相がTiN単結晶の生成や成長に大きく関与している可能性が明らかになった.
同様の手法を用いて,チタン以外の金属窒化物の合成を試みたところ,バナジウム(V),ニオブ(Nb),タンタル(Ta)の酸化物を原料とすることで,それぞれVN, NbN, TaNの単結晶粒の集合体が得られた.また,クロム酸化物の原料からはCr2Nの多結晶体が得られ,本合成手法は金属窒化物の合成に高い汎用性を有していることが明らかになった.
さらに,本合成手法におけるTiNの生成反応の中間生成物であるナトリウムチタン酸塩に着目し,それを原料に用いてBN粉末と反応させたところ,850℃でTiNの生成反応が進行した.得られるTiNはミクロンオーダーの粒子からなる粉末であったが,この温度はTi酸化物とBN,金属Naを用いた合成手法でのTiNの生成温度よりも150°C以上も低い.この金属Naを用いない窒化物の生成反応は,工業的な応用に適した金属窒化物の低温合成プロセスに発展する可能性がある.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本年度の前半はコロナウイルスの感染状況の悪化の影響を受け,実験を数多く行うことが困難であったが,初年度において,TiN結晶粒の生成反応を精査に調べることで,本課題における金属窒化物の新しい合成手法の反応過程やメカニズムを詳細に明らかにすることができた.具体的には,生成自由エネルギーの大きな副生成物のナトリウムホウ酸塩が本反応の駆動力であり,それと中間生成物のナトリウムホウ酸塩の液相が結晶の生成に大きく寄与していることが考えられた.
同様の合成手法を用いることで,Ti以外の金属酸化物からVN, NbN, TaNなどの単結晶粒やCr2Nの多結晶体が得られることが明らかになり,固体窒素源を用いた本合成手法が,金属窒化物の単結晶や粉末の低温合成に高い汎用性を有することも明らかになった.ただし,生成する金属窒化物の単結晶の大きさは,いずれの窒化物においても100μmオーダーであり,機械的強度などの諸特性が評価できるミリメートルサイズにまで成長させることには成功していない.これは来年度以降の課題である.
また,本合成手法を用いたTiN生成反応の中間生成物であるナトリウムチタン酸塩に着目し,それを原料に用いてBN粉末と直接反応させることで,850℃の低温でTiNの生成反応が進行することも分かった.この反応は,金属Naを必要としない金属窒化物粉末の新しい低温合成プロセスの開発につながる芽であると考えている.
さらに,本手法でTaの窒化物の合成を試みたところ,金属酸化物原料がTa2O5の場合は常圧安定相のε-TaNが,FeTaO4では高圧低温相と考えられているθ-TaNの単結晶粒が生成し,金属酸化物原料を適宜選択することで金属窒化物の多形の結晶粒を作り分けることが可能であるという実験結果も得ることができている.

今後の研究の推進方策

初年度の研究で,本合成手法は,ナトリウムホウ酸塩の生成を伴った金属酸化物と固体窒素源であるBNとの広義のアニオン交換反応であり,多くの種類の金属窒化物の合成に適応することが可能なことが分かってきた.そのため,次年度も引き続き,種々の金属酸化物を原料にした合成を行うことで,本合成プロセスが適応可能な金属窒化物を明確にする.初年度は主に遷移金属の窒化物の合成を行なったが,今後は,次世代のワイドギャップ半導体であるAlNやGaNなどの高い産業価値を有する金属窒化物にも対象を広げて研究を進める.また,本合成手法で得ることができる金属窒化物に関しては,高品質の結晶の育成に挑戦するとともに ,原料や加熱温度などの合成条件を精査することで,結晶サイズや形態を制御した小粒径粉末の合成や,生成する結晶相の作り分けなども試みる.さらに,初年度の成果に基づいて,構成元素にNaを含む金属複酸化物と固体窒素源のみから金属窒化物の合成を試みることで,本手法を,産業での応用性の高い金属Naを必要としない合成手法へと発展させることを図り,本課題の研究ステージを萌芽段階から,実用応用を視野に入れた開拓的な研究段階へと引き上げる.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2021 2020

すべて 学会発表 (5件)

  • [学会発表] 酸化物と窒化ホウ素を用いた窒化タンタル結晶粒の合成2021

    • 著者名/発表者名
      久下直也, 関谷 暢, 山田高広, 山根久典
    • 学会等名
      日本セラミックス協会2021年年会
  • [学会発表] 窒化ホウ素を固体窒素源に用いた第5族遷移金属窒化物の合成2020

    • 著者名/発表者名
      久下直也, 関谷 暢, 山田高広, 山根久典
    • 学会等名
      令和2年度日本セラミックス協会東北北海道支部研究発表会
  • [学会発表] 酸化物と窒化ホウ素を用いた窒化タンタル結晶粒の作製2020

    • 著者名/発表者名
      久下 直也, 関谷 暢, 山田 高広, 山根 久典
    • 学会等名
      粉体粉末冶金協会2020年秋季大会
  • [学会発表] チタン酸化物と窒化ホウ素を用いた窒化チタンの合成2020

    • 著者名/発表者名
      山田高広, 関谷 暢, 山根久典
    • 学会等名
      粉体粉末冶金協会2020年秋季大会
  • [学会発表] 窒化ホウ素を窒素源とした窒化チタン単結晶粒の合成2020

    • 著者名/発表者名
      山田高広, 関谷 暢, 山根久典
    • 学会等名
      日本セラミックス協会第33回秋季シンポジウム

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公開日: 2021-12-27  

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