研究課題/領域番号 |
20K21234
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
熊田 伸弘 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (90161702)
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研究分担者 |
磯部 敏宏 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (20518287)
武井 貴弘 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (50324182)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 放射光X線回折 / マテリアルインフォマティクス / in-situ測定 / 構造変化 / 低熱膨張 |
研究実績の概要 |
低熱膨張性酸化物の候補材料をマテリアルインフォマティクス的な手法によって51種類を選定し、その温度変化を放射光X線回折を用いて昇温および降温in-situ測定を行った。その中の一つであるナトリウムチタンケイ酸塩(ETS-4)の昇温in-situ測定では600K付近までは回折ピークの加熱による変化が認められず、それ以上の温度で分解することがわかった。限られた温度範囲であるが、熱膨張をしないことが確認できたのでその機構について検討する必要がある。その他の候補材料においても低熱膨張材料への応用の可能性がある化合物を抽出することができた。以上のようにマテリアルインフォマティクスと放射X線回折による高温in-situ測定を行うことにより効果的に低熱膨張材料を探索することができた。特に結晶構造の変化を短時間で可視化することができるので熱膨張特性に限らずその他の特性についての情報を得ることができた。さらに詳細な高温回折データを用いて結晶構造解析を行い、そのメカニズムを検討することで実用化に向けた材料探索を行う。また、半導体製造装置に用いられる高純度シリカの廃棄物のリサイクルのために水熱反応を用いた物質変換については多くの物質を提案することができるが、その中の一つの層状ケイ酸塩であるケニヤアイトについて放射光X線回折を用いた昇温in situ測定を行った。その結果、1050K付近の分解に至るまでに2段階の構造変化が生じることがわかった。その詳細な構造変化を調査するとともに他のケニヤアイト型化合物についてもその構造変化を調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの感染拡大により放射光X線回折実験を一度しか行えなかったが、低熱膨張性酸化物の候補材料をマテリアルインフォマティクス的な手法により物質を選定し、その温度変化を放射光X線回折を用いて昇温および降温in-situ測定を行うことにより効果的に低熱膨張材料を探索することができた。特に放射光X線回折を用いた昇温および降温in-situ測定は48時間程度で行うことができ、その高い有効性を示すことができた。今年度は引き続き低熱膨張性酸化物の探査を行うとともに新しい物質系での同様の試みを行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
新しい圧電材料、光触媒および特異吸着性多孔体等についても物質探査に関するマテリアルインフォマティクスを試み、放射光X線回折による構造特性に調査する予定である。半導体製造装置に用いられる高純度シリカの廃棄物のリサイクルのための水熱反応を用いた物質変換などのようにSDGsに対応した物質探査のためのマテリアルインフォマティクスについて試みると同時に、その中の結晶構造の加熱による変化について放射光X線回折を用いて調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
放射光X線回折実験を行うための旅費において派遣を予定した学生が新型コロナウイルスの濃厚接触者となり支出することができなかった。
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