研究課題
一段階の液相合成法で様々な配列規則化度をもつナノ粒子超構造体の合成を試みた。自己集合させるナノ粒子として、配位子によりサイズやサイズ分散が容易に制御できるニッケルナノ粒子をモデル材料として検討を行った。配位子であるトリオクチルホスフィン(TOP)のニッケル前駆体に対するモル比が大きいときにはニッケルナノ粒子が最密充填した長距離秩序構造体が得られたが、小さいときは配列に規則性は見られずアモルファスな超構造体に変化した。この差が生じるメカニズムを解明するために、大型放射光施設にて反応中のフラスコ内の様子をリアルタイムで小角X線散乱測定する実験を実施した。その結果、ナノ粒子の核形成と成長、および凝集にともなう散乱パターンを得ることに成功し、それがTOP/ニッケル比によって大きく異なることが分かった。凝集前の散乱パターンのフィッティングにより成長途中のニッケルナノ粒子のサイズとサイズ分散を求めると、TOP量が多くなることで凝集前のサイズ分散が小さくなることが分かった。一方で凝集が開始するタイミングは、TOP量によらず一定で、およそ9 nmに到達するときであった。このことは、凝集臨界サイズに到達するまでのナノ粒子成長を制御することが凝集後の生成物である超構造体の規則化度の制御に決定的な役割を果たすことを意味している。得られた超構造体の細孔構造を窒素の吸脱着等温線測定により求めると、規則化度が高いほど均一な細孔径をもつことが分かった。今回の成果は、多様な機能性多孔性材料の簡便な合成条件を見つけただけでなく、構造を制御する機構を明らかにできたことで、さらに異なる物質での超構造体合成につながるものである。
2: おおむね順調に進展している
ナノ粒子の配列規則化度を大きく制御できる条件を見出しただけでなく、放射光実験によってその原因を突き止められたことで、今後の多様性につながる大きな成果を得られた。
金属以外の物質群でも同様のコンセプトで合成可能か検討する。具体的には金属硫化物などの半導体ナノ粒子の検討を行う。
他機関での実験や打ち合わせがコロナウイルス感染拡大による出張自粛により中止またはリモートでの実施となり、想定よりも旅費の出費が少なくなったため、残金が生じた。今年度は、研究が順調に進んでいることも鑑みて、外部への委託測定などを計画当初よりも積極的に活用し、かかる費用に充当する予定である。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)
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